真波と帰り道


普段バス通学の多い私は朝練のため朝早くバスに乗り、帰りは日が暮れた頃に出るバスに乗る。
箱学は山頂にあるから校門前に停まるバスはほぼここの生徒で埋まっているので最早スクールバス状態だ。
そんなわけでいつもはだいたい一人で乗る帰りのバスなのだが、今日は珍しく隣に真波が座っている。
今日は朝から土砂降りで流石の真波も自転車を漕いで来られなかったらしい。


「えへへ、先輩と一緒に帰るのって新鮮で楽しいですね」

「だね。いつもは一人だから私も楽しいな」

「え、先輩帰りはいつも一人なんですか?」

「そうだよー。ここに停まるバスってあんまり遅くまでやってないからいつも終バスでギリギリに乗ってるんだよ。それにも乗り損ねた時なんかは福富に山の下のバス停まで送ってもらってる」

「そうだったんだ…先輩も自転車通学にすれば良いのに。だったら毎日一緒に登下校できるのになぁ…」

「私には朝っぱらから山登る体力ないよ…」

「でも俺、自転車に乗れないから雨の日って嫌いだったけど先輩と二人っきりで居られるなら雨も好きになれそうだよ」

「可愛いこと言うなぁこやつ!!」


真波の頭をぐりぐりと撫でると嬉しそうに顔を綻ばせる。天使かよ…。


「それにしても今日もつかれたな〜。早く帰ってご飯食べてお風呂入ってゆっくりしたいよ」

「あはは、先輩おっさんみたい!」

「うっさいわ」

「でも俺もお腹空いたよー。パワーバーって美味しいけどすぐお腹すきますね」

「まぁ携帯栄養食品だしね。そうだ、良かった私のらうちに寄ってかない?今日カレーなんだよ。真波カレー好きだったよね?」

「えっ、いいんですか!?カレー大好き!!」

「いいよいいよー昨日作りすぎちゃって減らないんだよカレー…真波が食べてくれると助かる。一晩たってるから美味しいよ〜!」

「やったー!!先輩の家に先輩のカレー!!俺すっごく幸せだ!!」

「うおおおすごい喜びようだな…。家の人には遅くなるってちゃんと連絡するんだよー」

「はい!先輩は家にご両親いらっしゃるんですか?挨拶したいなぁー」

「ううん、今日は家に誰も居ないの」

「…えっ」

「うちお父さんは出張で単身赴任だしお母さんは今日夜勤なんだよ。お兄ちゃんも今日は友達と旅行行ってるし。だから誰も帰ってこないし気兼ねなくくつろいでいいよ」

「……あのさぁ先輩」

「ん?」

「こういう事するの俺だけにしてね?」

「こういう事って?」

「家に誰も居ないのに男連れ込むの」

「人聞きの悪い言い方すんな。私だって見境なく呼んだりなんかしませんよー。真波だから安心なんだよ」

「なんだかそれも複雑だよ……先輩、絶対に俺以外の人家に呼んじゃダメだからね」

「はいはい分かったよー」

「うわぁ絶対分かってない…放っておくと心配だからちゃんと見張ってないとダメだなぁ」

「ま、真波にそういう事言われるとは思わなかったよ…」



2014.5.12




おまけ


「先輩先輩!昨日はカレーご馳走様でした!!先輩ってほんと料理上手だよね!!デザートのババロアもすっごく美味しかったし!!」

「喜んでもらえてよかったー。また食べにおいでね」

「え、じゃあ毎日行っても良い?」

「流石に毎日はちょっと…」

「名前に真波、何を盛り上がっているのだ?」

「東堂。それが昨日真波が家n「先輩達には内緒です。ねっ、名前先輩?」え…お、おおう…」

「名前先輩、じゃあ次はいつの予定がいいですか?」

「あーそうだなぁ…来週の水曜なら都合良いよ」

「やった!楽しみだなぁ…」

「な、何の約束だ真波!!教えろ!!」

「内緒です」

「なっ…!!」



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