パート中にて


「いらっしゃいませ!」

「名前ちゃん今日も元気ねぇ〜」

「あ、藤本のお婆ちゃん!いらっしゃいませ!」

「アンタ離婚したばかりで辛いだろうに一生懸命働いて健気だわぁ…ほれ、お菓子やるから元気だしなね名前ちゃん」

「いやいや辛いとかは全く…でもありがとうねお婆ちゃん」

「お礼はその半額シールで良いよぉ。ほれこの刺身に貼っとくれ」

「それ目当てか婆ちゃん!!貼りません!!」

「ケチだね〜」

「お刺身は明日が安いから今日は他の特売品でどうぞ!!大根とか安いよ!!」

「じゃあ今晩は爺さんの好きなブリ大根にしようかねぇ」

「まいど〜」

「名前ちゃーん、ポン酢ってどこかしら〜?」

「あ、はーい今行きまーす!」


離婚して実家に出戻り早数週間。
菩薩…基、嶋田君のお蔭で働き口も見つかって今では毎日が充実している。
大学時代にスーパーでバイトしていた経験がここで生かされるとは…!!
地元のスーパーだしお客さんは知り合いも多いから懐かしい人たちとも会えるし本当に恵まれた職場だ。
嶋田君には感謝しても仕切れないなぁ…。


「苗字さーん、そろそろ昼休憩入ってな」

「はーい!」

「苗字さん随分早く慣れたよなぁ。親父とお袋もうちのスーパーに華が出来たって喜んでたよ」

「こんな出戻りのアラサーが華なんかで申し訳ないないよ…おじさんもおばさんや他の従業員さんも優しいし働くのも楽しいから嶋田マートはパラダイスだね」

「そう言ってもらえたら俺も嬉しいよ。でもあんま気ぃ張りすぎないようにな」

「うん。嶋田君もねー」

「はーい」


最早私の中で神格化されつつある嶋田君から激励をいただき上機嫌で休憩室に入る。
早起きして作ったお弁当を食べながら携帯を開くと新着メールが入っている事に気付き携帯を開く。


「…うん、見なかった事にしよう」


送り主の名前と本分にこれでもかと言うほど長文で綴られた謝罪の言葉に一瞬にして気分が下がる。あんな事が合ってもまだ懲りていないと言うのかあの男は…!!


「俺も休憩〜って、苗字さんどうかした?」

「あ、お疲れ様嶋田君。いやぁ、ちょっと嫌なメールが来てて…」

「…聞いちゃまずかったらごめんな。それってもしかして元旦那さん?」

「聞いちゃまずい事なんてないから気ぃ使わなくて良いよ。特に隠す事でもないし。お察しの通り元旦那です。未練がましく戻ってこいって何度もメールしてくるんだよねぇ…」

「そっか…そういえば離婚の理由って…」

「あー、そういえばちゃんと話してなかったっけ。まぁなかなかバイオレンスな話だし話すと長くなりそうだからなぁ…」

「んじゃ今日仕事が終わった後飲みに行かない?そこでゆっくり話聞かせてくれよ」

「おっ!いいね!でも私のあんな酔っ払い姿見てよく飲みに誘ってくれるね嶋田君…ほんとに菩薩なの?」

「まぁ確かにあの酔いっぷりにはビビったけどあれくらいじゃ何とも思わないって。いつも町内会のオッサン達に囲まれて飲んでるからな」

「あはは、ならちょっと安心だわ。今日何時に上がれそう?」

「えーっと、今日は大方の仕事も済ませてるしそのあとの予定も無いし…閉店直後には上がれそうだな」

「じゃあ私一旦帰って着替えてくるね。閉店時間見計らってまたお店に来るよ」

「いや、暗いしそっち迎えに行く」

「近いんだし気にしなくて良いよ?」

「いや女の子に夜道歩かせられないって。とにかく終わったら連絡するから自宅待機!分かった?」

「へい!了解っすボス!」


女の子に夜道歩かせられないかぁ…嶋田君は紳士だ…。まぁ女の子って歳でもないけどね。
思いがけず嶋田君と飲みに行く事になってちょっとわくわくしちゃうな。
そういえば繋心以外の男の人と二人で飲みに行くなんて久しぶりだ…うわ、何着ていけばいいんだろう。




2014.7.8
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