ねるねるねるね



「お邪魔しまー…ってあれ?なんだ銀時だけか」


お店の定休日である水曜日。
暇を持て余しふらりと通いなれた万事屋へと足を運んだものの相も変わらずぐーたらとソファに寝転んでジャンプを読んでいる昔馴染みの姿に溜息が出る。


「なんだってなんだよテメー。俺だけだったら何か不満だっつーんですかァ〜」

「遊びに来るなり平日の昼間っからゴロゴロとジャンプ読んでる昔馴染みの顔見たら不満でしかないっつーの。神楽ちゃんと新八君は?」

「お妙と三人で映画だとよ。今流行りのチミの名はとか言うの?アレを見たいつって神楽が煩くてな」

「あ〜あれなんか若者の間でめちゃくちゃ流行ってるらしいね。映画は見てないけどウチュオワが歌ってる後後後世って歌は結構好きだよ」

「おいおい後後後世ってどんだけ現在に絶望抱いてんの?今どきの若いもんの考えるこたぁ俺には分かりかねるね」

「そりゃアンタがおっさんになった証拠だわ。あーあー神楽ちゃんと新八君にお菓子作ってあげようと思って色々買ってきたのに無駄になっちゃったな〜」

「えっお菓子ィイ!?おいおい名前ちゃんお前も人が悪いねぇ!!別にガキどもが居なくたって銀さんの為に作ってくれれば良くない!?っつーかたまにはお前も銀ちゃんだけの為に作ってあげるっみたいなサービスしても良くなくな〜〜い!?」

「よくなくねえよ。まあ別に作ってあげてもいいけどさ。暇だし」

「お?なんだよお前今日はやけに素直じゃねえか。も、もしかしてアレですか?今更俺の魅力に気づいちゃった的なアレか?おいおい今頃気づいたっておっせーよ?銀さんの心はもう結野アナのものになっちゃってるからね。まあお前がどうしてもっつーんなら少しは考えてやらねえこともないけどねっ」

「えーっと、まず@の魔法の粉に水を混ぜてあとはスプーンでねるねる…」

「って無視すんじゃねええええ!!っていうかエッ!?なに!?お菓子作りってソレねるねるねるね!?まさかのねるねるねるね!?」

「あ〜魔女がイーッヒッヒって笑いながらねるねるしてたCM好きだったなー。よくヅラと一緒にどっちが似てるかで勝負したもんだわ」

「いやどんだけくだらねえ勝負してんだよお前ら!!っつーかそれお菓子作りって言わないから!!ドヤ顔でお菓子作り〜なんていうもんだからてっきりケーキとか作るもんだと思って期待しちゃったじゃねえか!!」

「ねるねるねるねだって立派なお菓子でしょうが!!だってこれ三角の水の容器をいかに零さずに混ぜられるとかで意外と難易度高かったりすんだからね!!混ぜるのだって絶妙にいい具合に混ざり合った瞬間を見極めないといけないしテメーが思ってる以上に奥が深いんだよぉねるねるねるねはよ!!」

「んなもん誰だって簡単にできるわボケェ!!ねるねるねるねごときで何偉そうにしちゃってんのこいつ!?」

「あっ今カチンと来ました〜。もう銀時にはねるねるねるねんやねえから!後で欲しいって言ったってもう遅いからなクソ天パが」

「んなもん要るかってんだよ。ったくんなガキみてえな駄菓子持ち込みやがって…っつーかお前今日非番だっけ?いい歳した女が休みに予定もなくねるねるしてるたぁ寂しいこったねえ〜」

「いや働きもしないで平日の昼間っからゴロゴロしてるアンタにだけは言われたくないんだけど…。残念ですけど今日は夜から予定入ってますぅー。バイト仲間の女の子達と女子会だもんねー」

「うわ出たよ女子会…つーかお宅らもう女子って呼べる年齢じゃねえの分かってる?女は18超えたらもう立派な大人なんだよ。いい歳していつまでも女の子扱いされると思ったら大間違いなんだっつーの」

「まぁ確かにこの歳で女子ってのはきっついかもしんないなぁ。私ももう心身ともに自立した立派な大人の女性なわけだし?頭ん中いつまでも中二の銀時君が羨ましいわ〜〜」

「男はいつまでたっても胸に中二のあの夏の心を持ち合わせた生き物なんですぅ〜」

「はいはい。よし、いい感じにねるねるできた!Aの魔法の粉をかけてー…んん〜!美味しい!幸せ〜」

「……」


いい具合に混ざり合った薄紫色はいかにも健康に悪そうだけど何度食べてもこの味には飽きないのだ。
昔はよく小遣い握りしめて駄菓子屋にこれを買いに行ったもんだよな〜。
早く食べたくて公園でねるねるしてたらいつの間にか銀時とヅラと晋助がやってきて俺にもよこせだあんまい棒の方がんまいだあ駄菓子と言えばチョコバットだあとよく騒いでたっっけ。
…あ…そうだ、確かあん時もよく銀時にねるねるねるねを馬鹿にされたんだっけ。
そのくせ私が食べてるとじっと見つめてくるもんだから一度だけ試しに「一口食べる?」と言ったらぶっきら棒に「いらねえ」って返されたんだよね。
今思えば私ら全然成長してないな〜、なんてチラリと銀時に視線を向ければ死んだ魚のような瞳とばっちりと目が合ってしまった。


「…銀ちゃん、一口食べる?」

「…いらね」



ほんと変わんないわ、こいつも私も。



2017.2.14
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