空揚げとマヨネーズ


「あ、副長さん」

「ん?お前は確か甘味屋の…」

「はい、みつ屋のバイトです。今日は土方さんも非番ですか?」

「ああ。休みが溜まってるつってうちの局長に無理矢理休みをとらされてな…。親父、いつもの」

「あいよっ」


休日にいきつけの定食屋で遅めの昼食をとっていると見慣れた色男と出くわせた。
真選組の鬼の副長と呼ばれるこの人とは何度か沖田君軽油で顔を合わせたことがあったけどなんだかんだで一対一で話をするのは初めてだ。
見れば見るほど瞳孔開きっぱなしで今にも人を殺しそうな顔をしてるけどイケメンには変わりない。こりゃ良い目の保養だ。


「ん?何見てんだ」

「え?いやぁ、見れば見るほど色男だな〜と…」

「ブッホッ!!なっ、いきなりなんなんだよテメエは!!」

「いやだって本当の事ですし…そんだけ顔が良かったら女も寄りどりみどりでしょ?沖田くんと言い真選組ってなんでこう顔の良い人が多いんだろう…。もしかして顔選考とかあるんですか?」

「ばっきゃろ、んなもんあるわけねえだろ。局長の面見てから言えっつんだよ」

「いやいや近藤さんだってアレで顔は悪くはないよね?ゴリラの中ではイケてる方じゃない?」

「ゴリラの中ではってなに!?なにナチュラルに人の上司ゴリラ認定しちゃってんの!?」

「昨日もうちの店に団子買いに来てくれたんですよ近藤さん。恋人にパシ…お使い頼まれちゃって嬉しそうにウホウホ言ってました」

「ってまた貢いでんのかよあのゴリラは…ったく…」

「てか土方さんもゴリラって呼んでますよね」

「あ」


以前からなんとなく思っていたけどやっぱり土方さんってどことなく銀時に似てるような…。
いや土方さんはあんなちゃらんぽらんではないけど!?公務員でしっかり働いてるイケメンという時点であんなニートと比べちゃいけないんだろうけどなんとなく既視感を感じるというか親しみやすいというかなんというか…。


「はい名前ちゃん、空揚げ定食お待ち」

「わー!美味しそう!」

「土方の旦那もお待たせ。土方スペシャルお待ち」

「お、きたきた」

「って…え…なにそれ…」

「土方スペシャルだ」

「いやいやいや…え、なに、マヨネーズ…?」

「見たまんまマヨネーズだ」

「マヨネーズか…そっか…って、えええええ!?マヨネーズウウ!?これ全部マヨネーズなの!?きもっちわるぅううっ!!」

「気持ち悪くなんかねえよ。一口食ってみるか?」

「断固拒否だよ!!え、なに土方さんいつもそんなもん食べてんの!?今私ん中で土方さんの色男のイメージが粉砕したんだけど!?」

「あ?どういうことだオイ。色男がマヨ丼食ってもいいじゃねえか」

「良くないわ!!イメージがた落ちだっつの!!あーーもう一瞬にして土方さんの株大暴落だよ〜〜!!目の保養として微妙に憧れてたのにさーー!!」

「一方的に好意抱いというて被害者面してんじゃねえよ。ったくこれだから見てくれだけで人を判断するような中身ペラッペラの女はめんどくせえんだ。恥を知れってんだよ」

「いや堂々と犬の餌食べてる人に言われたくないんですけど…。土方さんって良い人ができても食事に行った途端フラれるタイプでしょ」

「ばっ、んなわけねえだろーが!!マヨネーズを馬鹿にするんじゃねえ!!マヨは神羅万象なんにでも合うオールマイティーアイテムなんだよ!!」

「限度ってもんがあるでしょ…」


残念だよ残念すぎるよこの人…。
黙ってればイケメンの色男なのにマヨラーって何??マイナスポイントが多すぎて外見入れてもトータルでマイナスしか残らないよどんだけ残念なの??
なんでこう私の周りには味覚が狂った野郎が多いんだ。
隣でぺちゃぺちゃとマヨ丼を食べる土方さんを見ていたらさっきまで目の保養だとか言っていた自分が馬鹿らしくなってきた。
やっぱりあのドSの上司でありゴリラ部下だ、まともな人間なわけがなかった。


「はあ…」

「あからさまにため息つくんじゃねえよ。飯が不味くなるだろうが」

「はいはいすみませんでしたね〜。あ、ちょっとマヨ分けてよ土方さん」

「あ…?散々マヨを馬鹿にしておいてどういう風の吹き回しだ」

「空揚げにマヨネーズかけてマヨ唐にしようかなって」

「…成程な。美味そうじゃねえか」

「あ、じゃあ空揚げお裾分けするんでマヨネーズとトレードって事で」

「お、おう…」

「はいどうぞ。私もさっさと食べちゃおっと。いただきまーす」

「……」

「ん〜。食欲は失せちゃったけどやっぱりここの定食は美味しいわー。今日もいい腕してるね親父さん」

「おっ、あんがとよ名前ちゃん。嬉しいから小鉢サービスしちゃうよ〜」

「ほんとに!?ありがとー!ラッキ〜おかず増えちゃった!あ、土方さんも一口どう?」

「…お前…」

「はい?」

「名前、なんつったか」

「苗字名前ですけど…え、なんで今更名前?」

「っせーな今までまともに聞いたことなかっただろうが!」

「あれ、そうだっけ?まあ気軽に名前手呼んでくださいよ。沖田君も勝手に私の事呼び捨てにしてるし。あ、なんなら名前様とかでもいいけど」

「誰が呼ぶか馬鹿」


2017.2.14
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -