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「名前〜!!じゃが芋わんさか掘れたべよ〜!!」

「おおお!!今年も大量だね〜!!」

「こりゃ本格的に農業でもやっても良いかもしんねえべ!!ここの土さ美味いもんばっかこさえてくれっしなぁ!!」

「え〜〜農業は疲れるって!これあとでルッツ君とこ届けてあげよっと。大喜びしてくれそうだね」

「あいつも芋好きだもんなぁ!!」

「フェリ君とこ持って行ってニョッキの作り方教わっても良いなぁ〜。考えてたらお腹すいてきた」


土のついた男爵芋がごろごろと詰められた袋の中から芋を何個か腕に抱え台所へ持って行く。やっぱ男爵といえばジャがバターっしょ!!
串で芋に行くつか穴をあけオーブンに放り込んだ。やっぱ野菜も採れたてが一番美味しいもんね〜。
あ、そうだバターがもう少なかったような…。
冷蔵庫の中を調べてみるとやはりバターが後残り僅かとなっている。
仕方ない、仕入れに行くか。


「デンさーん、私バター貰いに行ってきますね〜」

「そいやもう少ねぐなってたもんなぁ!!この芋持って行くんけ?」

「うん。ついでにルッツ君とこにも行ってくるよ」

「おう!んなら軽トラの荷台に積んでおくっぺ!!」

「ありがとー」


急ぎ足でコートとマフラーと手袋を身に纏い雪靴を履いて外に出る。
寒さでなかなか掛からないエンジンにもたもたしつつもなんとか動き始めた。
木々が覆う道を少しスピードを上げながら走らせると森を抜けた所で一気に銀世界が広がった。
真っ白な世界にポツンと見える赤い屋根。あそこが最初の目的地である。


「よいしょ…着いたっと…。こーんにちは〜〜!!バッシュさーーーん!!」


庭先で声をあげてみるものの返事は無い。
留守…って事は無さそうだけど…。


「バッシュさーーん!!!居ませんかーーーー!?」

「ええい騒がしいぞ名前!!ヤギ達が驚くではないか!!」

「おおお!?びっくりした〜!!居たんなら返事くらいしてくださいよ!!」

「お前のやかましい声に返す返事など無い。で、何の用であるか」

「相変わらず厳しい…。バターが切れちゃったから譲ってもらえないかと。はいこれ採れたての男爵です!」

「どれ…うむ、今年は一層出来が良いようだな」

「沢山あるのでなくなったらまた言ってくださいね〜」

「うむ。今バターを持ってきてやるのである」

「ありがとうございまーす!」


荷台に乗ったじゃが芋の袋を軽々と方に担ぐバッシュさんは流石だ…。
細身に見えてがっしりしてるんだよなぁ。
しばらくするとバターを持って来てくれたバッシュさんにお礼を言い、妹のリヒちゃんまた一緒にお菓子でも作ろうと伝えてもらうよう頼んだ。
人の妹を誑かすでないとか何とか怒られてしまったけど…バッシュさん相変わらずシスコンだなぁ…。
おっと、急いでルッツ君とこに行かなきゃオーブンにかけた芋が焦げちゃう!


「こんにちはー!ルッツ君居ますかー?」

「おお名前じゃねえの!!何か用かよ!!」

「おーっすギル。相変わらずプーやってんの?」

「お前だって似たようなもんだろうが!!」

「否定できねえ…。ルッツ君は居ないの?パトロール中?」

「んにゃ便所」

「兄さん!!そういう事を他人に言わないでくれと何度言えば…!!

「お、ルッツ君出てきた。やっほー」

「あ、あぁ名前か…。どうしたんだ?俺に何か用か?」


駐在所の奥から出てきたルッツ君は相変わらずビシッと決まった警官姿で背筋も伸びている。
この真面目で規則正しいルッツ君がストーブの前でぬくぬくとみかんを食べているアホ面のギルと兄弟だって言うんだからびっくりだよね…。


「男爵が豊作だったから持って来ました!」

「なにぃ!?芋だと!?」

「おお…見事な芋だな…」

「あはは、見事な芋って!でも今年は一層出来が良いみたいでね!沢山あるから食べてね」

「っしゃー!!しばらくは芋三昧だぜ!!」

「いつもすまないな…。と、ところで名前…時間があるならここでゆっくりコーヒーでも…」

「ごめん、ジャガバター作ってる途中なんだ〜!芋焦げちゃう!今度ゆっくりコーヒー頂に来るね!」

「そ、そうか…。わかった。帰りには気をつけろよ」

「大丈夫大丈夫。じゃあまたねー」

「おー。ヴェスト、俺らもジャガバター作ろうぜ!」

「そうだな。だがこの調書が終わってからだ」

「マジかよ!!」


相変わらずだなぁあの二人…。
あの二人がここに来てしばらくたつけど随分この暮らしにも慣れたみたいだ。
芋大好きって言ってたしまた届けてあげようっと。


「おっと、早く帰ってじゃがバタ!」


心なしか軽くなった軽トラに乗り込み来た道を辿るように銀色の世界に車を走らせる。
森を抜けた先にある見慣れた我が家に帰れば暖房の効いた暖かい室内とじゃが芋の良い匂いが漂ってきた。


「お帰りなさい名前さん!バターもらってきてくれてたんですね!」

「ただいま〜!貰ってきたよー!芋焦げてない!?」

「大丈夫です、今ちょうど良く中まで火が通ったみたいなので外に出した所なんですよ!」

「わーありがとフィン君!じゃあ早速バター掛けちゃおう!」

「楽しみだなぁ〜。この冬初のジャガバターですもんね」

「だね。スーさんたちは?」

「工場の方で作業中だよ。アイス君もまだ帰ってないみたい」

「じゃあ先に私達だけで食べちゃお!」

「ふふ、そうですね!」


あつあつの芋を少し底の深いお皿に移し、張った芋の皮に包丁でそっと切れ目を入れる。
ほくほくと湯気が立つ切れ目の中心に塩を少しだけ降り、貰ってきたバターを乗せれば一気に熱で溶かされじゃが芋へ沁み込んで行く。
キラキラと目を輝かせ今か今かと涎を出しそうな勢いのフィン君に木のスプーンを差し出せば「いただきます!」と豪快にじゃが芋を掬い口の中に入れた。


「あっつ!!い、けど美味しい〜〜!!!」

「どれ私も…んんんんん!!んまーーい!!!」

「ほっくほくでじゅわってバターが溢れて…!最高です!僕いますごく幸せ!」

「美味しい!美味しいねえフィン君んん!!」

「名前さーんっ!!」


あまりの美味しさに感動してフィン君とがっしりと抱きしめ合った。
やっぱりじゃがバターは最高だ!!



2014.8.13
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