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「苗字さん!苗字さんって及川先輩と付き合ってるんですか?」

「え……ええーっと…」


ついにキタァアアアア!!!ずっと予想していた最悪の事態がついに来たよ!!!
ジュースを買いに1人で自販機まで行ったら年下であろう女の子数人に囲まれるようにして声をかけられた。
いや、近いうちにこんな日が来ると思ってたから覚悟はできてるんだけどね…。
しかしいざ目の前にすると足がすくむ…!私のチキン野郎!


「え、あの、そのっ…つ、付き合ってる、というか…」

「は?付き合ってないの?」

「あ、いえ付き合ってますごめんなさい」

「ほらやっぱり〜!絶対にそうだって言ったじゃん!!」

「えーじゃあ及川さん告白に成功したって事!?」

「キャーッ!すご〜い!さすが及川さん!!」

「えっ……?」

「じゃあもう手とか繋いだんですかぁ〜?」

「繋いでるに決まってんじゃん!あの及川さんだよ!?」

「え〜でも今回はマジだったしどうなのかなーって」


ん?あれ?なんか様子がおかしくないかい?
普通ならここであんたみたいなのが及川さんと付き合うなんてありえな〜い、とか言われるんじゃないの?
それどころか及川君ファンであろう女の子たちが楽しげに話をしてるし…どうなってんだろうこれ…。


「ちょっと、苗字さん困ってんじゃん」

「あ、ごめんなさ〜い。いきなり変な事聞いちゃって」

「ううん、それはいいんだけど…えーっと…」

「あ、もしかして私らが苗字さんに怒ってるとか思ってました?」

「えっ、違うの!?」

「むしろ逆ですよ!及川さんが苗字さんに片思いしてるの知ってたし!」

「そうそう、及川さんが急に女遊びやめたからなんでかなって調べたら苗字さんの事が好きだって事が分かってぇ〜。最初はちょっと許せなかったけど私らも苗字さんの事こっそり見てたら良い人だって分かったからむしろ応援してたんですよ!」

「前みたいに顔だけ目当ての女に取られるより全然良いもんね!」

「そうそう!ファンの間では及川さんの恋を応援しようって結束までできてたし!」

「え……ええええええ〜〜〜…」

「そういうわけなんで及川さんの事宜しくお願いしますね苗字さん!」

「フったりしたら許しませんから!!」

「それじゃあ〜!」


嵐のように去っていく彼女たちの背中を見つめて呆気にとられたままヨロヨロとおぼつかない足取りで教室に戻る。
私の帰り止まっていた望ちゃんがげっそりとした私の顔を見て目を見開いた。


「何があったの!」

「年下の及川君のファンの子たちに囲まれて…怒られるんだと思ってたら
及川さんの事よろしくって…もう色々びっくりしすぎてキャパオーバーだよ…」

「あ〜…なるほど…」

「以前からファンの間で応援しようって結束してたって言うんだよ…」

「そうじゃないかなーとは予想はしてた。及川ファンって及川と付き合いたいとかそういうんじゃなくて単純に応援して見守りたいって感じの子ばっかみたいだし」

「そうだったの!?私てっきり校舎裏に連れて行かれてしめられるんだとばかり…!!」

「ないない。てかそんなの心配してたわけ?同学年の女子だって入学当初は及川の顔にキャーキャー言ってたけど今はあのアホっぽい性格知って扱いも雑じゃん。ファンとか告白してるような子はあいつのキラキラした部分しか知らない年下だけだよ」

「そ、そうなんだ…知らなかった…なんか一気に力が抜けた…」


荘とは知らず及川君のファンが怖くて練習見にいけないとか思ってたのか、私は…。
及川君にも悪いことをしたけどファンの子達にも申し訳ない勘違いしちゃってたんだなぁ…。


「でも性格知っても及川が好きって同学年の女子も居るしアンタと付き合ってるって知っても告白してくる年下も絶えないだろうし妬まれるのは変わりないけどね」

「…あ…ああああぁあ……」

「腹括りな。告白に適当に返事しちゃったアンタの責任だ」

「うううっ…うううおおうううう…」

「とんでもないのに好かれちゃったねえあんたも」

「それを言わないでぇええ……」




2015.1.20



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