「岩ちゃん、俺今幸せで死ねそう」
「そのまま死んどけ」
手のひらに収まったシンプルなラッピングのされたクッキーをじっと見つめる。
まさか突然のタックルから始まってあんな展開になるなんて思ってもみなかった。
名前ちゃんが泣いちゃった時は本気で焦ったけどね……まさかあそこまで俺の体のことを心配してくれるなんて思ってなかったから、あたふたしながらも嬉しさで胸が一杯になった。
頬を少し赤くした表情で、本当は練習見に行きたいと思ってた、ごめんねと謝る姿が愛しくてカッと熱が上がってしまった。
俺の為にクッキーを作ってきてくれるしあんな可愛いことも言ってくれるしほんとにもうどれだけ好きにさせれば気が済むの名前ちゃん!
咄嗟に手とか頭触っちゃったし実はタックルされた時も背中にダイレクトに柔らかさを感じちゃったしもう俺どうしよう!!
「岩泉〜、及川の顔すげえキモい事なってんだけど」
「知らん、ほっとけ」
「マジでこのクッキー美味いな」
「やっぱ苗字の手作りレベル高いな〜」
「へえ、あの子料理上手なわけ?」
「暇だったから作ってきたってシュークリームとかくれたこともあったな」
「マジかよ!?羨まし…」
「っていうかやっぱり及川さんと苗字さんって付き合ってたんですね」
「国見は何で苗字と知り合ったんだ?」
「同じ図書委員です。結構お世話になってて、昼寝させてくれたり勉強教えてくれたり…」
「あ〜なるほど。苗字年下に甘そうだもんな〜」
「ちょっとお前ら!名前ちゃんのありがた〜い手作りクッキーなんだからもっと味わって食べなよね!!」
「お前はなに女々しくクッキー見つめてんの」
「うっさい!勿体なくて食べられるわけないじゃん!!」
「そーかよ。あーマジでうめぇなこれ」
「なんか苗字さんの優しさを感じますね」
「また他にも作ってくんねえかな〜」
「作りません!!作ったとしても及川さん専用だからね!!お前らには一かけらもやんないから!!」
「つーかお前それ食わねえならこっちよこせよ」
「あげるわけないじゃん!?これは家に持って帰って大事に保管すんの!」
「いや食えよ。腐るぞ」
「ほんと気色悪いなお前…」
「うっさーーい!!」
2015.1.20