20 きっと背徳的に生きる術しかみつけられなかった。 みんな、そう。幸せの定義すら、巧くは創れない。 何かに理由がなければ行動すらできなくて、説明できないことを不純だと謡ってしまう。"問題"はいつでも刻が緩やかに解決してくれるのに、それが急いてしまっては、やはり不純なのだろうか。 サフィールはもういない。その寂しさを埋めるために、利用していると言っても否定ができない状況が、嫌なのだ。客観視しなくとも明白で、だから見合う理由が欲しくなる。 ただ、もう、偽れない。 理由が欲しくて、どうしようもなくやるせないけれど。 触れた唇が離れた時、リヴはジェイドの胸の中で泣いた。 「どうして?」 その問いは複雑だ。身籠っているのは、彼の子ではない。それを受け入れて歩む未来が、けして容易でないことは誰の目にも明らかなのだから。 「理由が必要ですか?」 頷けば、至極柔らかな笑みを魅せて、彼は言った。 貴方はただ憎めばいい、それだけですよ 「サフィールを思い出して私を憎むならそれを受け止める理由が、私にはありますから。いつだって隣にいましょう。いつでも、その息の根を止めれる様に」 「バカね…」 すきだから? 愛しているから? そんなものは理由にすらならない。それすらも越えないと、二人はお互いの手をとりあえない。 それが不幸なのか"幸せ"なのか。 深刻なのか浅はかなのか。 正しいのか歪曲しているのか。 事実だけがただそこにポツリと在って、それを埋めたくて埋めたくてどうしようもないのに、その溝は深まるばかり。 「ジェイド、一つだけ言ってもいい?」 未だ触れそうな程に近い彼の吐息を感じつつ、リヴは言った。 私は 貴方を すきにはならない 「勿論、知っていますよ」 言葉とは裏腹に、この上なく"幸せな"笑みがお互いに溢れた。好きや愛しているの言葉すら煩わしい。二人の間には似つかわしくない。 だからこうも言う。 サフィールの分も貴方が 隣にいて いつも、いつでも - E N D - ハッピーエンドの定義なら棄てよう 愛を紡ぐ言葉すら必要ない だからこれは"愛"じゃない 10/1/25up [←prev]|[next→#]|story top |