19 少し、間があった。 リヴは冷えきった料理に目を向けて、急ぎ過ぎたかな、と呟いた。緊迫した雰囲気が和むことはなかったものの、シンと鎮まる動悸に身が委ねるられている感覚。脈打つ鼓動が、聞こえてくる。顔を上げて、視線が交わるのを合図にジェイドは口を開いた。 "リヴをもう泣かせないで下さい" 「…と一言だけ」 後は…最期まで憎まれ口を叩かれましたよ、と微笑んで彼は言った。 「それはどういう意味なんだろうね?」 「貴女なら、わかるのでは?」 「…ううん。全然」 その偽りは、最後の抵抗。彼に、委ねた。 「あの鼻垂れの尻拭いなんてごめんですよ、私は」 その言葉が冷淡であったらどれだけいいだろう。 「貴女の移り気な恋心には迷惑甚だしい」 触れるその手が私の頬を打ったならどれだけいいだろう。 「けど…」 抱きしめた腕の中が振りきれる程に生易しいものであったならば…どれだけよかっただろう。 「貴女が愛しくてしょうがない」 引き返せないことと知りつつ、倫理も道徳も棄てて。拐われることに快感すら見出したリヴは、本当に愚かだと思う。 私の隣で 笑っていて下さい サフィ。貴方がいない世界で、どうやって笑えばいい?もういない貴方の行き場のない願い、その答えをこの人に託してもいいですか? 10/1/20up [←prev]|[next→#]|story top |