08



紅茶の湯気が不規則に舞い、ゆらゆらと上へ登っていく。それを散漫させる為に吹いた呼吸が、溜め息の様でなんだか嫌だった。

わからないわ、ただ

「今は会いたくない、んだと思う」

不自然な箇所で切れた言葉により、更に曖昧さが増す。思わず苦笑した。つられて口角を上げるだけの笑みを浮かべたピオニーは「そうか」と一言だけ呟いた。

「ピオニー、誤解してる」

間を開けてリヴは話し始めた。何を?と投げ掛けられた疑問に対して更に言葉を乗せていく。

「サフィ…がいつかはジェイドと対峙するってこと、覚悟してた」

幼い頃、リヴたちの傍にいた大きな存在。その先生の死。それをきっかけに、あの人の心は堅くなに昔のまま。

前を行くジェイドと
過去に縛られたサフィール。

彼の幾年過ぎても褪せない決意は、いつか二人の間に火蓋を落とすだろう。その予見していたことが、現実になってしまった。ジェイドに軽く流され、勝手に憤慨して、タルロウだかタルタルだかで対抗してみては壊されたり。そんな半ばふざけ混じりの、二人の接触を見てきた。ジェイドなりのサフィールへの接し方。きっと跳ね退ける程度で、本気で命のやり取りをしていたわけではなかった。

けれど、相容れない二人の結末はあまりに哀しい。サフィールの過去への執着にジェイドは訣別を下した。

「覚悟してたはずなのに。ただね、悔しいの」

サフィに対してひとつだけ許せないことがある。

戻らぬ過去の再生でなく

「私との未来を見ていてほしかった」

呟かれた言葉にピオニーは全てを悟った。辿々しく話していたリヴの一言一言を静かに聞いていた中、手にしたカップの中身は程よく冷めていて、彼はそれを一気に喉の奥へと流し込んだ。



[←prev]|[next→#]|story top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -