W 「たっだいまあ! あれルークにティア、久しぶりい! ね、聞いて聞いて!さっきアニスちゃんユノに会いに行ったんだけどね…もうすっごい綺麗だったんだよ、ベールで少し顔隠れてたけど! ね、フローリアン?」 「うん!」 まだ頬の赤いフローリアンが満面の笑みで答える。挙式が待ち遠しい、と話すナタリアを筆頭に花嫁であるユノの話題が次第に膨らんだ。 「にしても陛下が羨ましいな、ユノみたいな高嶺の花が花嫁なんて」 「俺ピオニー陛下とユノが結婚なんて未だに信じらんねえけどさ」 「陛下に謁見した時のさ、俺の嫁になれ発言はぶっちゃけユノ引いちゃってたしねえ」 「でもアニス、その通りになるなんて…ロマンチックだと思うわ」 「そうですわね。私もあの幼き頃に誓い合った言葉が現実になる日を何度願ったか」 憂いを含むナタリアを全員がしんみりと微笑んだ。約一名を除いて。デリカシーに欠けるのかはたまたその憂いに鈍感なのか、場の空気諸とも唐突に疑問を投下したのはルークだった。 「なあ、にしてもジェイドのやつ遅くねえか?」 確かに。風を当たりに行ったにしては遅く時間はもうじき定刻を指す。 「もうこんな時に。大佐ってばどこ行ったのかなあ?」 アニスがジェイドがいつもそうするように"やれやれ"と同じ動作をしてみせて、それがやんわりとその場を和ませていた。 けれど。 暗黙のように胸に馳せた思いがあって、それはどうやらここにいる全員一致しているものだったらしい。燻るような淡いような想いはすでに皆が知っていることだった。 |