少しだけ嫉妬する
「何もされてねぇか、ちひろちゃん」
「うん、大丈夫。 着替えと傘、ありがとね倉持」
「ヒャハ、ちひろちゃんのためだからな」
ほんとに10分も経たず倉持がやってきた。 けどさすがの倉持もここは空気読んだのか渡すもの渡して帰っていった。しかも俺の荷物を持って。 まあすれ違い様に「変な気起こすなよ」って言われたけど。
俺のじゃなくて他の男のもの着るとかあんま気に入らねぇけど、ここはそうも言ってられないしまあ倉持だから許してやることにする。嫌だけど。
「着替えれる?手伝おうか」
「…冗談だよね」
「本気って言ったら?」
「あっち行って変態」
「ははっ、ひでー言われよう。 んじゃ着替えたら出て来いよ」
じと目で見られたらさすがにこの場に残ることもできなくて、一旦昇降口の外に出る。 心なしかさっきより雨は弱まってる気がする。 まあ雨が降っていようが止んでいようが今日は送って帰るんだけど。
「お待たせ」
「サイズ合ってねぇな」
「そりゃ倉持の服だもん」
やっぱ俺以外の男の服着てんのムカつく。 けどもう着てしまってるわけで、どうしようもない。
「帰ろ?」
「あー…ちょっと待って」
もう一度抱き締めさせてって言って、有無も言わさず抱き締める。 倉持の服を着ているおかげで、若干倉持の匂いがする。 それが気に入らない。 俺のちひろなのに、他の男の匂いがするなんて。
「…よしよし」
「俺ガキじゃねぇんだけど」
「私が好きなのは御幸だから、大丈夫」
大丈夫って何度も繰り返しながら俺の頭撫でてきて、最初はガキ扱いされて不服だったけど、次第に俺は落ち着いてた。
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