激しく悔やむ
倉持と別れてから、すぐさま空き教室へと向かった。 使われていないから鍵がかかっているはずだが、片方のドアは内側から鍵をかけるタイプでしかもその鍵は壊れていると聞いたことがある。
本当かどうかは分からない。 けどちひろ達がいるのであれば開くのは間違いない。
頼む、間に合ってくれ…!
「ちひろ!」
勢いよくドアを開けて、中に入る。 だいぶ使われていないその教室は使っていない机や椅子があって、カーテンも閉め切っていて埃っぽい。 けどカーテンが閉まっているとはいえ今は昼間。 視界ははっきり見えた。
俺の目の前には数人の女子と、それに囲まれて倒れてるちひろ。 サーッと血の気が引いていくと同時に、俺はちひろの傍に駆け寄った。
「おいちひろ!」
「み、御幸くん…」
「な、なんでここに…」
いきなり俺が現れたことで動揺する女子数人。 そしてそそくさと逃げ出して行った。
あいつら許さねぇ。 けどそんなことより今はちひろの方が心配だ。
「ちひろ…」
「一也…? なんでこんなとこに…」
「…ごめん、ごめんな」
ちひろのブラウスは全開で胸元は丸見え。 頬を叩かれたってのも、薄暗くても分かる。 身体を動かさないのを見るに、きっとどこか痛いんだろうってのも推測できる。
なんでこんなことになったのか。 俺は思い当たる節があった。
…さっきの女子数人。 それは昨日俺にカップケーキを持ってきた連中。 そしてちひろとのキスを見せつけた連中。
つまり、嫉妬。 羨ましいという気持ちが恨みに変わっていったってところだろう。
俺が噂を広めようとしたばっかりに、ちひろがこんな目に遭ってしまった。 中学の時も似たようなことがあったのに、また、繰り返してしまった。
どんなに悔やんでもちひろに嫌な思いをさせてしまったことには変わりない。
「ちひろ…ごめん」
「一也…謝らないで…私は大丈夫だから」
「…全部俺のせいだ」
ちひろのために変わろうとしてたはずなのに、結局俺は自分のことしか考えていなかった。 何も、変わっちゃいなかった。
「御幸!ちひろちゃん!」
「…倉持、ちひろを保健室まで連れてってやってくれ」
「…いいけど、お前はいいのかよ」
「俺には、資格がない」
「は?おい待て御幸っ…!」
倉持の声もちひろの声も聞かず、ちひろを倉持に託して俺はその場から出ていった。 ← | →
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