松夢 | ナノ
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うそ、ほんとう


『ねぇ一松、聞いてほしいことがあるの』
「やだね」
『彼氏のことなの』
「聞かない」
『お願いだから。このために私パックの煮干しも買ってきたのよ、一松好きなんでしょ?』
「好きなのおれじゃないんだけど」
『でも足、そわそわしてるよ。本当は欲しいんじゃないの?』
「……っ彼氏の話とかどう考えてもおれの専門じゃないと思うんだけど。つーかトド松の専売特許」
『だめなの。トド松今デート中でさ、“勘違いされたくないから、絶対電話してこないでね”って言われてて』
「だとしても、おれに彼氏の話しても意味ないだろ。他は」
『おそ松はこういう類の話してもセックス事情にしか興味持ってくれないから、話にならない。カラ松は何相談しても俺に乗り換えればいいって話にすり替えるから無理』
「ぽいわ」
『チョロ松の親身になって相談乗ってくれる感じは嬉しいけど、経験が足りないのをカバーするように必死に返してくれるの見てると辛くなる。それに正直中身ない。十四松は十四松だし』
「で、おれってわけ」
『うんそう。聞いてくれる気になったでしょ』
「おれとチョロ松じゃ反応はそんなに変わらないと思うけど」
『ううん、全然違うわ。だって私はただ話を聞いて欲しいだけなのよ』
「……そんなに言うなら話によっては聞く」
『さすが一松!一松好きだよ』


「で、なんなの」
『彼氏と別れたの、さっき』
「へぇ……別れたんだ、彼氏と」
『そうなの。しかもついさっきうちに来て、他に好きな女ができたって』
「他に好きな女ができたなら仕方ないんじゃない」
『そこなのよね。本来仕方ないで終わらせられる問題じゃないのよ、こっちとしては』
「まぁそうだろね」
『でもアイツの心取り戻そうって思える程、私もうアイツのこと好きじゃないみたいでさ』
「ふーん」
『彼氏……元カレから話を聞いているうちにね、冷めちゃったんだよね。なんか』
「どんな風に?」
『私は今この人を見ているけど、今この人の目に私は映っていないんだなって。この人が今私に話しかけてるのも、彼とその女のためなのかと思ったら妙に気持ちが離れちゃって』
「へぇ」
『これって普通なのかな』
「そういうものなんじゃないの」
『そういうものなのかな』
「名前がもういいって思うんならいいんじゃないの」
『もういい、のかな』
「おれが知ってるわけないでしょ」
『あはは、それもそっか』
「……話は終わり?」
『一応、おわりかな』
「あっそ」

『まって、一松どこいくの』
「話終わったんでしょ。もう聞きたくないんだよね」
『……ごめん』
「おれが聞くって言ったんだから名前が謝る必要ないでしょ」
『でも無理矢理聞かせてごめんね、一松。だけど私』
「おれ、泣いてる女の子1人にすることに躊躇するような人間じゃないから」
『へ……』
「涙なんか見せても、おれには意味ないよ」
『これはちがっ』
「トド松帰ってくるまで部屋にいて良いから。これ以上おれに話を聞かせようとするの、やめてくれない」
『一松……』
「1人でいたくないんでしょ。でもおれだってこれ以上名前の話聞きたくないんだよね」
『ごめん、なさい』
「安心しなよ。名前は泣く程彼氏のことが好きで、今もどうするべきか迷ってるんでしょ。だったらやる事は1つなんじゃないの」
『……一松、ありがとう』
「じゃあ話聞く役割は果たしたんで」
『でもやっぱり行かないで!』
「だから、嫌だって……」
『1人にしないで、一松』
「……っ名前はズルいよね。そうやって目潤ませて引き止めれば、男なら誰だって言うことを聞くって分かってる」
『……』
「上目遣いでさ」
『……っそれは一松が立ち上がったから偶然そうなっちゃっただけで』

「名前が別れたって聞いて、すぐにおれが思ったこと言おうか」
『ねぇ一松、っ近いよ』
「ねぇ気にならないの。おれが思った事」
『なに、思ったの』
「ラッキー」
『……っ』
「おれは名前が好きなんだよ」
『そんなの、嘘ばっかり』
「嘘だなんて思ってないくせによく言うよね」
『思ってなくないよ。励ますために言ってるんでしょ。だって一松が私をなんて……』
「おれをズルい自分に向き合わせて自己嫌悪に陥らせようなんて、酷いよね名前は」
『そんなつもりじゃない!』
「名前がそんなつもりじゃなくてもおれにとってはそうなるんだよ」
『でも一松は私のためを思ってアドバイスしてくれたよ』
「そんなの」

優しくしてれば名前がおれのものになるんじゃないかって期待してるだけだよ。

「当たり前でしょ。おれは名前との事が好きなんだから」


[END]
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