あれから私は家に帰って叔父さん達にお願いした。聖マリー学園で勉強したいと。すると、叔父さん達は二つ返事でOKしてくれた。私がいつかそう言うだろうと予測していたらしい。
「立派なパティシエールになって、いつか美味しいケーキを焼いてね。」と微笑む叔母さんに私は、思わず泣いてしまった。本当に優しい人達だ。いつか絶対に恩返しをしよう、と私は心に決めた。

それから、あの青年の名は、アンリ・リュカスと言うらしい。彼は、私を聖マリー学園日本校に推薦してくれると言った。どうやら、彼は思ってたよりも良い人みたいだ。


私は、キャリーバックをカラカラと引きずりながら、聖マリー学園へ向かう。

聖マリー学園でやりたいことは沢山ある。スイーツの勉強はもちろん。私は、今まで家の手伝いとかで忙しく、友達と呼べる子がいなかった。なので、この学校で友達をいっぱい作りたい。それが、聖マリー学園で主に私がやりたいことであった。



(そして、いつか卒業して、立派なパティシエールになれたら……お母さん達みたいに私も店を開くの!)



理想の未来を思い浮かべながら、私は聖マリー学園の門を潜ったのだった。


****


「思っていた以上に広い学園ね。まずは荷物を置きに行きたいけど…寮は、一体何処にあるのよ。」



独り言をぶつぶつ言いながら、広い敷地を歩き続ける。聖マリー学園正門前のバス停から、沢山歩いてやっと校舎が見えたわけだけれど、そこから何処へ行けば良いか全くわからなかった。生徒もいないし、教師もいない。私は、どうすれば良いのよ。もう。



「…あ。女の子だ。」



ふと前を見ると、ツインテールの女の子と長髪の女の子が大きな像の前に立っていた。やっと人を見つけた私は胸を撫で下ろし、その子達に迷わず声をかけた。



「あの…」

「ん?ああ、あんたはもう一人の転校生さんやな。」

「えっ、私以外にもいたんだ!転校生。」



ツインテールの女の子は、目を大きく見開きながらそう言った。ってことは、この子も転校生なのか。まさか、こんな季節外れに私以外の転校生がいるなんてね。
お互いに驚いていると、長髪で関西弁の女の子がニコッと笑って言った。



「天野いちごさんとみょうじなまえさんやろ?私、加藤ルミ。寮が隣の部屋やから迎えにきたんや。よろしく!」

「こっちこそ、よろしく!いちごで良いよ。みょうじさんもよろしくね。」

「……よろしく。」



どうしよう。今まで友達とかいなかったから…こういうの何かこそばゆいなぁ。私は、加藤さんと天野さんが並んで歩く、その後ろを着いて行った。



「ここが女子寮。そして、ここがあんたらの部屋や!」

「わあ、可愛い!」

「(可愛い!)…まあまあね。」



そこは、ピンクで可愛らしくて、実に私好みの部屋だった。口には出さないけど。
加藤さんは、色々と部屋の説明をしてくれたけれど、チャイムが鳴ったので慌てて部屋を出て行った。何か、材料を用意する当番らしい。



「…ね、みょうじさん。教室って何処だかわかる?」

「わかるはずないでしょ。」

「だ、だよね…。」



肩を落とし「どうしよー」と言う天野さんに、私は溜め息をつく。これじゃ、また広大なこの敷地を歩かなくてはならないじゃない。
二人して落ち込んでいると、「天野いちごさん。みょうじなまえさん。」と突然声をかけられた。振り向くと、そこには絶世の美男子が。



「初めまして。2年A組、花房です。」


(うわぁ…この人、無駄にキラキラしてる。)


「2年ってことは、同い年…!」

「クラスも同じだよ。お近づきの印にいちごさんとなまえさんにプレゼント。」



そう言って、彼が渡してきたのは薔薇の花束。しかも、この甘い香りは…



「飴細工ね。」

「ああ。うちで育てている薔薇、ロイヤルハイネスが綺麗に咲いていたのを思い出して、それをモデルに作ってみたんだ。」


キラッ


「………。」

「作った?これを貴方が?」



いちごは尊敬の目で彼を見つめるが、その無駄なキラキラに目が痛くなった私は、さっと彼から目を離した。髪色は緑で目に優しいのに、キラキラが全然優しくない。知らなかったわ。イケメンは目の毒なのね。

私の反応を見て、花房くんは不思議そうに首を傾げていた。

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