来月のぴよぴよ幼稚園のお誕生日会で、私たちAグループはりんごちゃんのケーキを担当することになった。そこで予め、りんごちゃんにどんなケーキが良いか聞いてみると、"林檎と生クリームいっぱいのケーキがいい"、という返事が返ってきた。……林檎ケーキかぁ。何だか、りんごちゃんらしくて可愛らしいわね。

そして、その帰り道。どんなケーキにしようかと皆で考えながら歩いていると、いちごが突然「私がデザインしてもいいかな?」と言い出した。勿論、そういうのはやりたい人がやるべきだと思うし、私もスイーツ王子達も異論はない。
そういうわけで、来月のお誕生日ケーキのデザインは、いちごが担当することに決まったのである。



(一体、いちごはどんなケーキにするつもりかしら?)



私は、いちごとりんごちゃんが二人でどんな会話をしていたのかは知らない。でも、彼女ならきっとりんごちゃんが心から笑顔になれるような、そんな素敵なケーキを考えてくれると思った。
……って言っても、いちごはまだお菓子作りは素人だし。私が出来る限り、彼女のサポートをしてあげなきゃね。

そう思って来てみたはいいんだけれど、



「これじゃ、変質者よ…。」



ぴよぴよ幼稚園の庭で遊んでいる子供達をコソコソ隠れて観察するいちごは、本当に怪しい人だった。……てか、その変装は一体何の意味があるのよ。

正直いちごの隣にいるのも恥ずかしかった私は、一緒に来ていた小泉さんに「この子は置いて、帰りましょう。」と言って歩き出す。そんな私に、小泉さんは「え、でも…。」と困ったように、いちごの方へ目を向けた。きっと、いちごのことが気になるのだろう。……それなら、私は独り先に帰らせてもらうわよ。お腹も空いたし。



「わわわ、待ってよ!なまえちゃん〜〜!!」



名前を呼ばれて振り向けば、小泉さんの腕を引きながらいちごが此方へ走ってきた。どうやら、園児に変質者と呼ばれ慌てて逃げてきたらしい。当然でしょ。

で、まあ結局…皆で帰ることになりました。



****


「なまえちゃん。ここの雪だるまなんだけど、ホワイトチョコの中身は何にしたら良いかな?」

「…そうね。カスタードなんて、どうかしら?」

「カスタードか〜!うん、美味しそう!」


「そのスノードームはどうするつもりなの?」

「スノードームは林檎と生クリームを求肥で包むの!」

「なるほど。それは、安堂くんの仕事ね。」



自室に戻り、私達はいちごの描いたデッサンを見ながら話し合う。なかなか面白そうなケーキが出来そうね。
明日、早速このデザインをスイーツ王子達にも見せて、出来たら夜にお試しで作ってみよう。そんな会話をしてから、もう夜も遅いしそろそろ寝ることにした。シフォンもバニラもとっくの昔に眠ってしまっている。



「色々手伝ってくれてありがと!おやすみ、なまえちゃん。」

「別に私は大したことしてないわよ。…おやすみなさい。」



布団に潜ると、疲れていたのかすぐに睡魔がやってきた。



(いちごが一生懸命考えたケーキだもの、上手くいくといいなぁ……)



****


その次の日の夜。さっそく、いちごのデザインで実際にケーキを作ることになった。つまり、いちごのデザインは無事、スイーツ王子たちに採用されたのだ。まあ、私が手伝ってあげたんだから当然ね。 
ケーキを一通り作り終わったところで集中力が切れたのか、いちごは深く息を吐きだした。



「ふう…全員分作るのって結構大変。」

「でも、上手になってきたよ。」

「甘いわね。この程度で疲れてたら、一流のパティシエールにはなれないわ。」

「はは。相変わらず厳しいな、みょうじさんは。…あ、そうだ!これから皆で購買部に買い出しに行かないか?」



安堂くんがそう提案すると、いちごとバニラが「行くー!!」と元気よく手を挙げた。どうやら、キャラメル以外は、皆行くようだ。私は別にお腹も空いていないし、キャラメルと共に待ってると言ったんだけど、なぜか花房くんに強制的に連れて行かれた。解せぬ。

ムカついたので、私はミルクティーを奢るように彼に言った。でも、余裕の笑みで「いいよ。」と了承されてしまったので、何だかこっちが負けたような気分になる。……やっぱり、ムカつく。
でも、まあ…新発売のミルクティーはなかなか美味しかったので、今回は特別に許してあげるわ。

満足そうにミルクティーを飲む私を見て、シフォンはクスリと笑っていた。



****


そして、お誕生日会当日ーーー



「いよいよ今日だね、お誕生日会!りんごちゃんも待ってくれてるかな〜?」

「うん。マジパンも土台もできてるし、あとは飾り付けだね。」

「何度も練習したんだもの。目を瞑ってでも作れるわ。」



そんな話をしながら調理室へ向かっていると、途中で擦れ違ったのはBグループの子達で。その子達が持っているケーキを見て、私達はピタリと足を止めた。

それは、私達が今から作る予定のケーキと同じデザインのものだった。

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