「さて。紹介も終わったところで、少し遅くなったけど、いちごちゃんとなまえちゃんの歓迎パーティーをやろう。カフェ君。」

「oui!」


ぱああああっ


「うわぁ…!」

「………っ!」

「皆で準備したんだよ。」


か……

かわいい!美味しそう!


カフェが魔法で出したスイーツの数々に、いちごと私は目をキラキラ輝かせる。…流石、スイーツ王子達ね!どれもレベルが高いわ。特にこのフルジェの上に飾られている、マジパン人形なんか、私といちご。それから、シフォンとバニラのものまであって、とっても可愛らしい。
私達は、食べるのが勿体ないなぁと思いながらも、せっかく私達のために作ってもらった物なので、有り難く頂くことにした。



****


「ぴよぴよ幼稚園、お誕生日ケーキ……各園児担当は、A、B、Cグループにて作業…か。なんだか、楽しそうだね!」



自分の部屋に戻ってきた私達は、順番にお風呂へ入った。部屋に1つ設置されている風呂はなかなか広くて、私はとても気に入っている。
お風呂から上がり、髪をドライヤーで乾かしていると、布団の上に寝そべっていたいちごが急に声をかけてきた。私は、ドライヤーを止めて、いちごの持つプリントに目を向ける。…ああ、今度やるボランティアの話か。私は、ふんっと鼻を鳴らして言った。



「…別に、私はそんな楽しみじゃないわ。子供好きじゃないし。」

「え、なまえちゃん。子供好きじゃないんだぁ。(あれ、でも…一太君に一番懐かれてなかったっけ?)」

「…いちごは、好きなの?子供。」

「あ、うん!大好き!」



私がそう聞くと、元気に答えたいちごは、本当に子供が大好きらしい。…確か、妹がいるって言ってたっけ。いちごは、プリントに目を向け、楽しみだなぁと笑みを浮かべていた。

だが、しかし……そのボランティアは、そんなケーキのように甘いものではなかったのである。



****


ぴよぴよ幼稚園お誕生日会、当日。



「みんなー!聖マリー学園の皆さんよー。」



先生のその声に、部屋で遊んでいた子供達は一斉に此方へ目を向ける。そして、目をキラキラ輝かせて、わあああっと私達の方へ走ってきた。その姿は、まるで敵に攻め込む兵士達のようだ。
そのあまりの迫力に私は「ひぃっ!」と情けない声をあげ、隣にいた花房君の後ろに隠れる。花房君は、そんな私に苦笑していた。



「わーい!おやつだー!」

「お菓子だぁ!」

「あんどう!遊ぼー!!」

「さつき君は、こっち!」

「ルミちゃーん!」


(な、何これ………。)



私は、目の前に広がる恐ろしい光景に、顔を青くする。…かわいい?そんなこと言ってられない。幼稚園児のあまりの元気の良さに、私は早速帰りたくなったしまった。
いちごなんか、スカートめくられてるし。……っていうか苺柄って、流石いちごね。いちごを憐れんで見ていると、その子供が私のところにもやってきて、私のスカートに手をかけた。あ、やばい!!そう思ったときには、既に遅く。



「おお!こっちは、白のレースだ!」

「へえ、結構可愛いじゃん!」


「…………………こいつら、しめる。」

「「ど、どーどー;」」



私が怒りに震えながらそう言うと、近くにいた花房君と安堂君が慌てて私を抑えた。…幼稚園児に怒って、大人げない?そんなの知らないわよ!
暫くして、ようやく落ち着きを取り戻した私は、はあーと深い溜息をついた。皆の前でスカートめくられるとか、もう恥ずかしくて死にたい…。いちご達は、落ち込む私を見て、苦笑を浮かべていた。


その後、誕生日ケーキの箱を開けて、皆はわいわい盛り上がった。Aグループからは注文を受けていたプリンセスケーキのプレゼントだ。すごく喜んでいる子供達を見た私は、先ほどまでの怒りを忘れ、フフッと笑みをこぼした。やっぱり、自分が作ったものを喜んでもらうのってすごく嬉しい。

元気よく「いただきまーす!」と言って、ケーキを食べ始める園児達を、私は少し離れたところから眺める。すると、1人だけ隅っこに座り、ケーキを食べずにいる女の子が目に入った。…どうしたんだろ?
どうやら、いちごもその子に気がついたらしく、私達は互いに顔を見合わせ首を傾けた。



「…ああ、あの子な。小泉さんの妹のりんごちゃんや。」

「ルミさん!…小泉さんの家って、この近くなの?」

「うん。小泉さんは入学したときから1人寮生活やけど、りんごちゃんは先月家族と一緒に青森から引っ越してきたんや。」

「へえ、そうだったんだぁ。」

「りんごちゃん、めっちゃ大人しくてな。なかなか馴染めへんみたいやねん。」



加藤さんに理由を教えてもらうと、いちごは少し考えてから、りんごちゃんの元へ向かって行く。…いちごは、ああいう子を絶対放っておけないタイプね。

りんごちゃんのことは、いちごに任せておけば、きっと大丈夫。そう思った私は、いちご達に背を向け、花房君達がいる方へ歩いていった。



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