「「「「………。」」」」


「なんか……聞いちゃまずいこと聞いちゃったね。」

「そ、そうだね。とりあえず、一太君の気持ちは確認できたけど…。」

「う、うん。一太の奴、そんな風に思ってたのか…。」

「親は店とチビ達にかかりっきりだし、寂しかったんだろうな。」

「…ああ。悪いことしてしまったな。」


「ねえ!だったら、一太君にケーキ作ってあげようよ!」

「それって逆効果じゃない?」

「ううん。安堂君が本当に作りたいケーキなら食べてくれるよ。」

「僕が、本当に作りたいケーキ…。」

「うん!」



なまえ達の会話を盗み聞きしていた安堂達は、いちごの提案より早速ケーキ作りを始めた。

作るのは、抹茶ロールケーキ。安堂が一太くらいの頃に作ったお菓子だ。ほとんどの作業は、スイーツ王子がやってくれたが、いちごも沢山手伝いをした。
そうして、やっと完成した抹茶ロールケーキ。いちご達は、家族全員を集め、お皿も人数分用意した。後は、なまえと一太を迎えに行くだけだ。

迎え役となったいちごは、なまえと一太の腕を引っ張り、皆が集まる部屋へ無理矢理連れて行く。急に何だと不満を零す二人を無視し、目的地に辿り着くと、強引に部屋へ押し込んだ。



「………。」

「せ、千兄。……何、その箱。」


「一太に食べて貰おうと思って、皆で作ったんだ。」

「大福でも作ったのか?」

「いや…ちょっと違うな。」



安堂が箱を開ける。すると、中には美味しそうな抹茶ロールケーキがあった。それを見て、安堂の家族達は歓声を上げる。対して、一太は辛そうな顔をした。



「一太、早く食べてごらん。」

「…で、でも。俺はケーキなんか嫌いだって、」



すると、ずっと黙っていたなまえが一太の肩をポンッと手を乗せて言った。



「大丈夫。きっと食べたら、お兄さんの本当の気持ちがわかるよ。」

「千兄の本当の気持ち……わかったよ。一口だけだぞ!」



一太は、花房から切ったロールケーキを受け取った。そして、少しの迷いも見せたが、覚悟を決めてケーキを口に放り込んだ。



「う、うめー!!!」



笑顔を見せた一太に安堂達は、ほっと胸を撫で下ろす。一太だけでなく、安堂の家族も美味しいと微笑んだ。



「この餡は、一太が造ったやつだよ。」

「俺の?」

「名付けて、兄弟抹茶ケーキ!」



いちごがニコニコしながら言った。なまえはそのままじゃん、と心の中でツッコミを入れる。でも、一太が嬉しそうな顔をしているので何も言わない。



「千兄が作りたいのってこういう和菓子とケーキが混ざったようなお菓子なのか。」

「そうだよ。僕のルーツはこの和菓子屋『夢月』だ。いつか『夢月』の名前で、うちの隣に新しい店を出す。それが僕の夢なんだ。絶対捨てたりしない。僕の手で『夢月』を大きくするんだ。」

「千兄…、」

「ごめんね、一太。心配させて…。」

「千兄ーーーー!!」



ギュッと抱きしめあう安堂と一太。そんな二人をなまえ達は微笑ましげに見ていた。


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