小話 | ナノ



 
私を忘れて、よかったね。
幸せがどこにあるか、なんて考えるまでもなかったのに。
探しに行くんだね。
忘れる前の場所へ。

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2017/03/21 02:13


 
彼の評価から自由でいたかった。 常に彼を意識してしまう自分が嫌でたまらなかった。
だけど皮肉なもので我が身を厭うにつれて彼に溺れる自分がいる。
「自由になりたい?」
悪魔が笑う。
その手を取り、魂を売ったつもりだった。
だけどそれは、努力をしない自分の言い訳でしかなかったのだ。
悪魔の振りをした天使は自由へ導いてくれたのに。
自由を奪う彼こそが悪魔で、詰まるところ、とっくに悪魔に魂を売っていたのだ。
選ぶ自由は俺にある。
だから、俺はどちらも選ばない。
この空間で生まれ、死ぬわけじゃない。
世界は外にもある。
俺は自由で、だからさよなら。
俺は奪われた自由を選択するよ。

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2017/03/18 02:40


 
まただ。
女にデレデレしている慶介に溜め息が出る。
確かにお前は魅力的。
だけど毎回振られる理由くらいそろそろ気づいていいんじゃない。
お前に足りないもの。
いざというときの決断力。
ただひとりに向ける愛情。
お前に惚れてる俺でさえときどき目を覆いたくなる。
だって致命的だろう、この欠陥は。

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2017/03/06 03:49


 
思い出だから美しいと知っている。
真司は半ばうんざりしていた。
だから、忘れていた。恭介は幼馴染が絡むとことに脆くなることを、忘れたかった。
真司のことなど放り出し、自分を傷つけながら進んでいく。

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2017/03/01 02:42


 
別に、誰にも合わせる必要もなかった。
時を惜しんで移動する、ただそのためだけに速くなる歩行。
息を切らした恭介が追いつき、そして横に並ぶ。
平静を装うその顔がたまらなくかわいくて、つい、笑ってしまう。
自分に似合わぬと知りながら。
「何を笑ってるの」
いつまで俺を追ってくれるか、恭介。
移動のためのこの速度は、お前に追いかけてもらうために――捨てられても気づかぬように、ますます磨きが掛かる。
俺の隣に立て、恭介。
俺は同じ景色が見たい。

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2017/02/28 22:24


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