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 何事もなく次の日を迎え飛び起きることなく目を覚ますと、珍しく起き抜けでスッキリとした思考に気分がよくなる。だけど、そんなのは文字通り起き抜けだけの出来事だった。
 学校にいく用意をしようとハンガーを取り出すが、スカートが見当たらない。下に落ちたのか、いやない。しまってしまったのか、それも違う。神隠しにあったかのように忽然とその姿がなくなってしまった。

折角間に合う時間に起きたのに、遅刻するかしないかの瀬戸際で見つけたと思ったらなんと、弟がスカートを握りしめ、抱き抱え、寝ながらむしゃむしゃと食べているではないか。幼いながらに女性好きなわが弟、通称坊ちゃんは姉のものだと露知らず、その新品のスカートをーーー!!!!

「坊ちゃん!吐き出して!ちょっと!もー!」
「星河、落ち着いていいじゃないかあんな短いスカートなんて、ここに俺が高校生の時着てた星月の制服があってだな!」
「兄さんは黙ってて!!!」
「しかしなあ、よだれまみれのそのスカート履くのか……?俺の制服着よう、な?な?」
「私女子なんですけど!」
「大丈夫だって!女って思われない方が兄貴的には都合いい!!!」
「兄さんの都合なんて知らないよ……」

 坊ちゃんは起きないし、兄はいつにも増して過保護フルスロットルだしなんだかなあ。あの清々しい目覚めはなんだったのか。しっぺ返しがいささか早すぎるような気がする。
 諦めて男子制服に袖を通すと、思っていた以上に自身にピッタリで怪訝に思って兄を見るとニコニコとするばかりだ。もしかして…と思うが考える時間はない。急いで家から飛び出した。

・*・*・*・

 門をくぐって急いで理事長室に向かうと、その扉の前で豊かな美しい翡翠色の髪をたたえた天女のような女性がにっこりとして待っていた。そりゃそうだ彼女はまだ理事長なのだから。

「あら、今日転入してくるのは確か女の子だったはずだけど…?」
「す、すみません!ええと紆余曲折ありまして……あっちゃんと女の子です!一応は!!」
「…ふふふ。そんなに言わなくたってわかるわ。大丈夫よ。なかなか貴方のお兄様は曲者でいらっしゃるから大変ね。星河さん」

元の世界から行くと兄は、普通の高校を出て今は大学生のはずだがどうやらこの世界では星月学園に通っていたようだ。琥春さんの言葉を理解するのに少し時間を要したがなんとか苦笑いで場を濁すことにした。


「………さあ、案内するわ。担任の先生には話はもう通してありますから遅刻のことは平気よ。あとは貴女が挨拶をチョットすればいいだけ。」
「はい、わかりました。」

琥春さんに案内されるがまま教室に向かう。
私が転入することになった学科は西洋占星術科だそうで、なんとどの主要キャラとも一緒ではないとても気楽な学科だ。勉強が気楽かはさておき、だけれども。
のんびりとした担任の先生の声に誘われて教室の中に入ると、転入生は女子とでもあらかじめ言われていたのだろう残念そうな顔がちらほらうかがえた。

「はじめまして、田中星河と申します。諸事情がありこんな格好をしてますが、正真正銘女です。なるべく平等に扱っていただけると嬉しいです。とまあ、堅苦しい挨拶はそこそこによろしくね!」
「おー!!!よろしくなー!」
「席はあそこの開いてる席ね〜」
「はーい」

 ゲームではほぼ表現のなかった存在であるモブ中のモブでさえここまで顔面偏差値が高いのは仕様なのか。西洋占星術科のクラスメイトは皆一様にハンサムであり少し気後れしてしまう。さすが乙女ゲームの世界。ブスが見当たらない。いや私がこの世界唯一のブスか?オンリーワンなのか?考えてたら落ち込んできた。

 気さくな人ばかりだし席に辿り着くまで挨拶を交わしただけでも、仲良くできるなと思わせられるそのネアカさが私には眩しい。やはり私はオタクなんだな…と思わされた。






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テーマ「人外ファンタジー」
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