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 放課後、大天使颯斗くんの好意で寮の前まで送ってもらい夢のような時間を過ごしたはいいがそのせい…いやその甲斐あってか睡眠で得られる夢を見ることなく朝を迎えた私には、太陽がいつにも増して眩しく黄色く輝いてみえた。
 目が…目がァア……大佐ァアアァア
誰だバルスしたのは。眩しすぎる。やめてくれ。だって色々お話しできたの楽しかったんだもの…!夢見心地だったんだもの……!許してくれ。

 明日には何とかなるとか宮地くんには言ったが何ともならなかった。もはや私に女子制服を着るという選択肢が奪われたのである。というのも、女子制服は自宅のうえ兄の策略により私のもとに少なくとも土日になるまで送られることがないだろうという旨の書かれたメールが送られてきた。は?意味が分かんないな〜星河ちゃん分かんないな〜〜!これ、もしかしてもしかするとずっと男子制服で今後過ごしかねないぞ?
まあ、いいか…スカート履くのちょっと抵抗があるもんな。そこから思考を止めたところまでが今朝の回想である。よし、私の頭はちゃんと働いてる…ッ!

 欠伸を三歩に一回くらいの頻度でしながら大股で校舎に向かう。
脳内会議は捗るものの、前の世界では友人と待ち合わせて登下校していたからか、一人というのは久々であったためそこはかとなく寂しくなってきた。早く友達が、いや夜久月子女史とお近づきになりたいものである。

「おはよーう」
「はよー」
「あ?」
「ん?なに…?」
「今日こそは女子制服、とか昨日言ってなかったか?田中」
「ああ、それはね……!」

よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりに晴れやかな顔で応じると、徹夜でもしたのかテンションがおかしいぞと言われた。
お前はエスパーか?その通りだよ!!

「ううう……えっなに、なんでわかんの」
「わかるわかる」

笑いながら言われた。大爆笑されながら言われた。そんなわかりやすいのか。

「まあ、ドンマイってことでさ!男子制服だろうが女子制服だろうが田中は変わんないだろ」
「授業で寝てたら起こさないでおいてやるよ」
「一科目につきジュース一本でどうだ?ノート見せてやらなくもないよ〜〜」

うわ〜〜んやっぱみんなイケメン……最後のお前だけは許さんぞナルシスト野郎
まあでも、良心的か?見せてくれるだけありがたい。
 そうして授業はすやすやタイムと化したわけだが。さすがに、全部の授業を寝た訳じゃないジュースは二本でなんとか済みそうだ。
昼になりいそいそと購買まで行き昼御飯とノート代を調達するために向かい、ミッションコンプリートした私のミーハー心にふと邪念が浮かび上がった。

お昼御飯、颯斗くんと食べたい

 心の中の私、それはちょっと早計すぎないか。なあ。気持ちはよーく理解できるがしかしね、昨日の今日だぞ。ほぼほぼ知らん人だぞ。私に夢小説補正なるものが僅かにあるとすれば、人とそれとなく仲良くなりやすい程度のものだと今のところ解釈している。それがあったとしても、あの颯斗くんだぞ?難しいんじゃないだろうか。心の中の私。

考えるな感じろ、思うがままに行動するのが私よ私。

 購買前を心の葛藤を体現するかのごとくうろうろとしていると背後から声をかけられた。この優しげな声はまごうことなき颯斗くんのものである。ひえ、本人登場かよ。

「どうかなさったんですか、田中さん」
「えっいやあ、なんでも!こんにちは青空くん!あはは…」
「もう、あと何分かでお昼が終わってしまいますよ」
「えっ嘘!?ま、まじ??」
「……嘘です、」
「え、は…?」
「ふふふ…」

 お茶目にくすくすと笑う颯斗くんはとても年相応で、かわいらしい。
こんな冗談言うのか、この人は。大好きになっちゃうだろ。お前、そんな大好きだ…
脳内の颯斗くん推し会議は大盛り上がりである。思わず頭を抱えた。

「おいおい、食いっぱぐれんぞ青空」
「ああ、ええ…そうですね」
「ん…?こいつは?」

三バカ一号の声がする、そう思い顔を上げると真緑の髪のメガネ男子―犬飼隆文その人が立っていて。
嬉しい気持ちと、思っていた以上にハンサムだなという驚きで息を呑んだら唾液が気管に入って噎せた。しんどすぎる。

「ああ、朝話した田中さんです。」
「あ?どっからどう見たって男じゃねえか、女って話じゃなかったか?」
「いやいや、女です私。やめて、そんな男顔じゃないと思うんだけど」
「なんで、男子制服なんて着てんだよ…?あっ、そういうそっち系か?すまん…」
「えっなに、どういう系??謝られても困るよ!??」
「あ〜?じゃあなんでだよ〜??」

生粋のネアカ犬飼恐るべし。フレンドリーなその態度に会話内容は置いておいて私まで打ち解けた感じで話せてしまう。
素晴らしいなこの対人能力。
あっという間に一緒にお昼ご飯を食べることになり、事のいきさつなどを話すこととなった。





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