03(2/2)



「は〜〜なるほどな…さっぱり意味がわかんねえ」
「私も言っておいてなんだけど、よくわかってない。」

 かくかくしかじか戦法は利用できないと宮地くんとの対話で思い知ったので、懇切丁寧に購買で買ってきたアンパンとカレーパンを頬張りつつ話すと犬飼くんは頷きつつも真顔で答えた。わかるわかるぞ。何かしらの作為を感じずにはいられない。
颯斗くんは微笑ましげに相槌を打ち、私たちの話に対して口出しせず聞いているのだが楽しいのか楽しいくないのかこっちもさっぱりだ。

二度目の対面にして一緒にご飯を食べさせてもらうなんて奇跡を経験したからだろうか、補正がガンガンかかってめっちゃ心開いてくるのかなと思いきややはりそこは颯斗くん。気づかぬ間にというか、気づいたときには鉄仮面みたいなさ。うーん、これから仲良くなれば表情筋もこう……

「……い、…おーい!田中?」
「…ん?し、芝生……」
「ああ!?」
「あ!?いやごめん!」

 ぼんやりとしていたら視界にいきなり入ってきた芝生、いや犬飼くんがキレ散らかしている。
どうやら口が滑ったようだ。HAHAHAすまない。

「あんまりにもきれいな芝生頭だったからつい」
「芝生頭って何だよっ!!?」
「あっやっべーごめんごめん犬飼くん」
「心がこもってねえ!!!やり直しだ!」
「たっ大変申し訳ありませんでした〜〜!!!このとーり!」
「よし許す!」

 合掌した手を頭より高く構え、頭を垂れると温かく大きな手が頭に乗せられそのまま髪をぐしゃぐしゃにされる。口を滑らせた私が悪いし甘んじて受けいれると髪はもはや鳥の巣のようになってしまった。いやしかしテンションがというか、波長が合いすぎてどんどん乗せられてしまう。だめだこれ…楽しい。男子高校生のノリっていいよなと、改めて思いつついい気になってへらへら笑いながら髪をほぐしていると、そっとひんやりとした手に制される。

えっ、なにと思うが早いか颯斗くんの顔が肩越しに見え、自分の頬に熱が集まるのを感じた。

「田中さん、そんな大雑把にやってしまっては余計絡まってしまいます。」
「へ、あ…うん……」
「それと、犬飼くん?女性には優しく、ですよ。」
「あ?おう、そーいやお前女だったな。わりぃ!」
「そうです。では田中さん、じっとしていてくださいね…」
「…ひゃい」

 なにかしらの圧を感じたぞ今。ペットを窘めるような口ぶりに自然と私は犬の気持ちになった。ワン…
大人しく自分で無理にほぐすのをやめ颯斗くんになすがままにされているとなんだかいけないことしている気分だな、なんて思ったり。
意識してはいけないと思うたびに恥ずかしくなった。

「はい、いいですよ」
「ありがとう!青空くん!!」

 おいおい、好きキャラにここまでしてもらったら萌えねえわけねえだろ!!!!私のオタク暦何年だと思ってるんだ!!
思わず乙女の部分がひょっこり顔を出したが、勢いよく内なる私を静める。鎮まりたまえーーー!なぜそのように荒ぶるのか!!!!

私の好感度ポイントを一気に稼いでいく颯斗くんは柔らかく微笑み、そして地獄のような一言を放った。

「さて、もう予鈴はなりましたが…?田中さんは大丈夫ですか?」

 次の授業、移動教室では?いろんな意味で大丈夫じゃないと悟った私はきっと顔が青ざめていたことだろう。

そこからの記憶はないが、廊下は走るなといわれた気がする。






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