友情



土方達は人だかりができている現場に到着した。
無線からは大雑把な場所しか聞いてはいなかったが、これだけ野次馬がいれば嫌でも分かる。

パトカーから降り野次馬をかき分け大通りから路地裏へと足を運んだ。

「お疲れ様です!」
「あぁ」

隊士が土方と沖田を見て敬礼する。黄色のテープを潜り死体が横たわる場所へ近づいた。赤い水溜まりの上にある死体には赤い銃創が数十箇所付いている。

土方はしゃがみ込み銃創を見た。沖田も死体を見下ろす。体だけならともかく顔面まで撃ち抜かれていた。片方の目からは眼球が飛び出している。


「おぉ、見事に蜂の巣でさァ」
「銃殺か…これだけの数だったら銃声も凄かっただろ」
「あぁ、ここらの住人は一瞬テロかと思ったらしいですぜ」

そこへ検分を終えた原田が袋を手に持ちやってきた。

「これ銃弾。そこらに転がってた」
「へぇ…一人の人間にこんだけ撃ち込まんでもいいのにねェ…」


沖田は原田が持ってきた袋の中にある銃弾をのぞき込む。丸い鉛弾のような物が数十個入っていた。


――あれ?


「どうした?」

袋の中を見て動かない沖田を見て原田は怪訝な顔をする。

「これ…どっかで見た事があるような気がするんでさァ」

腕を組み首を傾げる。

「まぁ…銃弾なんて色んな種類の物が大量生産されてっからなぁ」
「…おい。そういう物を扱う時は爆発処理班に任せておけよ」

袋の中を覗き込む亜麻色頭とハゲ頭を見て土方は溜め息を吐く。

「ただの鉛弾に見えて実は爆発するかもしれねぇ」

土方はそう言うと立ち上がり隊士を呼んだ。

「これを土方さん目がけて投げりゃあ爆発するかねェ」
「怒りが爆発するだろうな」








「被害者は近くに住む会社員。独身で仕事から帰宅途中だったようです。銃創を調べたところ遠方からの射撃です。距離まではちょっと…」

事件から次の日、屯所の副長室で山崎が紙を片手に報告する。

「後、あの銃弾ですが…勝手に爆発するような物ではなかったようです。ただ材質が変わってまして…よく分からないんですよね。恐らく天人が持ってきた物で作られているかと」

最近そんな物が多いな、煙草を灰皿にすり潰しながら土方は思う。
まだ記憶に新しいあの猟奇事件だってそうだ。結局あの石がどうやって作られたかなんて最後まで分からなかった。

最終的にはえいりあんの仕業という事で終わらせた事件、できればもう関わりたくはない。


「後…例の隊士ですが…」

頬杖をつき考え込んでいると山崎が声のトーンを落とし少し顔を曇らせ話し始めた。

土方は顔を上げる。

「やはり黒ですね。攘夷浪士の会合へ行く所を目撃しました」
「あぁ…」

新年第一回目の隊士募集で来た新人の事だ。

今年に入ってから一度も討ち入りに成功していない。確実な情報でもいざ行くと浪士達に逃げられていたのだ。
土方は情報が漏洩しているのではないかと思い山崎に探らせていた。

「早めに摘み取らんとな……総悟に行かすか」
「え?!沖田さんにですか?!あの二人仲良さげでしたよ。S同士で気が合うとか何とか…」

山崎は驚愕する。しかし土方はその言葉を鼻で笑い飛ばし新しい煙草を取り出した。

「だからこそ行かせるんだ。仲が良い奴の方が釣りやすいだろ。それに…」

煙草に火を付け口に加える。

「あいつは殺るよ。そういう奴だ」


間者という事は近藤を危険にさらす可能性だって十分にある。あの子供が黙っている筈はない、土方はそう確信した。






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