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神楽の目が元の碧色に戻る。
「辛いアルゥ…むぐっ!」
戻った瞬間、起き上がり叫ぼうとした口を沖田は咄嗟に手で塞ぎ頭の後ろをもう片方の手で押さえた。
「吐き出すのは無しだぜィ、折角のハバネロキャンディー」
「…っ!!むっ…ぅ!!」
「辛いかィ?辛いだろィ、そうか辛いか」
ドS丸出しで涙目の神楽を見下す。
このまま飴が無くなるまで塞いでおきたかったが、さすがに眩暈もひどくなってきたので塞いでいた手を離し刀を床に置いた。
「ギァァァァ!!!辛いと思ったら痛いアル!!口の中が痛いアル!!」
「辛いと感じるのは痛覚からだからねェ…」
沖田は壁にもたれて座り、少女とは思えない顔で走り回る神楽を見る。神楽は一通り暴れた後、壁に手をつき口を開けたまま息を切らした。
「あ゛ーっ゛何アルカ?背中に何か刺さったと思ったら…そこからサッパリネ」
「背中?」
神楽が沖田に向かって背を見せる。見てみると小さな針が刺さってあった。
「はぁ…最期の一撃ってやつかねィ」
「お前、顔が白いネ」
「おめぇは赤いねィ」
「誰のせいだと思っているアルカ」
「ならお互い様でィ」
沖田は怠そうに溜め息を吐く。神楽は無言で見つめていたが、フンと顔を背ける。
「…礼は言わないネ」
「おぉ…期待はしてねぇでさァ」
「でも…」
神楽は傘の先端を沖田に向ける。
「次は負けないネ」
「…それもお互い様でィ」
沖田の横に神楽が目を擦りながら座る。
「…今、何時アルカ?…早くここから出ないと」
「…うわ、朝の2時だぜィ。おめぇ先に出て助け呼んでってくれィ。俺動きたくない」
「あぁー…そうしたいのは山々アル、けど瞼が……何か天パの怒鳴り声がどこからともなく聞こえてくるネ…幻聴が聞こえてきたアル」
「同じく。ニコチン中毒の怒鳴り声が…」
「ねぇ、多串君」
「あぁ?」
苦々しい顔をした黒髪とボリボリと頭を掻く銀髪は目の前の子供達を見つめた。
「銀さんさ、この光景二度目なんだけど……何?この複雑な気分?」
「…珍しいな。同じ気分だ」
幕府から許可が下り助けに来た土方と銀時が同時に溜め息を吐く。
目の前には亜麻色頭の肩に桃色の頭を乗せ寝息を立てて眠っている二人の姿があった。
ちょうど一週間前から始まったこの事件は犯人死亡という形で終わる。陽紀の父が所長をしていた研究所‘夢幻’はただの生物学の研究所となり存続を続けた。
沖田復活の幕府への説明は口がうまい武田に任せ事なきを得る。
沖田は一週間入院…だった筈だが、病院内で神楽と喧嘩した為に10日間入院した。
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