友情

41

「違うな。誰だ?」

近藤が刀の柄に手を当て口を開く。土方はフッと鼻で笑うと加えていた煙草を足元に捨てた。

「そちらから来てもらえるとは好都合。幕府の官僚を殺ったのはてめぇだな」

捨てた煙草を踏みにじりながら目の前の者を睨み据える。

「人造人間か」
「そういう事だな」

近藤と土方が同時に抜刀した。

沖田の姿をした人造人間が二人に向かって抜き打ちに一太刀浴びせようとするが、それぞれ左右に飛んで避ける。

振り上げた剣尖が月の光で閃いた。

「っりゃあぁぁ!!!」

雄叫びを上げ近藤が人造人間を目掛けて刀身を打ち込む。相手が身を開いて避けると体をひねらせつつ刀を横へ振った。それを人造人間は峰で弾くと足を滑らせ突きを繰り出してくる。

近藤は後方へ飛んで避け「うーん」と唸った。

「やっぱり総悟の姿だと変な感じだな。やりにくい」
「そうか?俺は日頃の鬱憤をアイツで晴らす。全力でやらせてもらうぜ」

刀を肩に担ぎ地を蹴る。人造人間の前までくると右へ回り込み身を低くして剣尖を下から斬り上げた。脇から胸辺りを斬り血の代わりに電流が走る。人造人間が振り向き様に白刃を斜め下へ振り下ろしたが土方は前方へ踏み込んだ後だった為、空を斬るだけで終わった。

「やっぱりただの欠陥品だな」

ニヤリと笑い刀を横に構えたまま体を左に半回転させ人造人間の背中に目掛けて一刀した。

「姿だけはよくできているんだがな」

近藤が飛ぶ。頭上に目掛けて思い切り刀を叩きつけた。
人造人間の頭の一部が割れ中の機械がよく見えるようになる。しかし、それでもなお刀を振ってきた。

「ホラーだなぁ。どうやったら倒れるんだ?」

間合いを空けた近藤が顔をしかめる。姿は沖田だ。頭の一部が無くなり眼球が取れ機械に繋がれたまま頬の横までぶら下がっている。

いくら作り物とは言っても見ていて気分の良いものではない。

「簡単だ」

土方は刀を納め鞘ごと手に取る。そして人造人間に駆け寄り振ってくる白刃を避けると思い切り鞘に入った刀を体へ叩きつけた。
人造人間が吹っ飛ぶ。川の水際辺りへ落ちた途端、バチバチと音を立て一瞬辺りが明るくなり大きな爆発音と共に炎上した。

「漏電かぁ。…しかし、あれじゃあ形は残らないな。幕府にロボットだったという証拠が提出できんぞ」

川の辺で煙を出し炎上する様を指差して近藤が土方を見る。

「あぁ?良いんだよ。あんなの姿形をなくした方がスッキリするだろ」

土方は刀を腰に取り付け苦々しい顔で「外見だけは立派に作りやがって」と呟きながら煙草を出す。

そんな土方を見て近藤は「ガハハハ」と豪快に笑い刀を納めた。

「何だ。トシもやっぱり姿を気にしていたんじゃないか」
「…本物が帰ってきたらボコボコにしてやるよ」

マヨライターを取り出し煙草に火をつける。


さて、恐らく今頃武田が証拠品を持って幕府に提出している筈だ。


「今夜は徹夜だな」

土方は炎が収まってきた残骸を見ながらフーと紫煙を吐いた。






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