友情

38

無数の銃弾が雨のように降り注ぐ。その中を二人は全速力で走っていた。

「お前よくそんな姿で走れるアルナ!!」
「そう思うなら負ぶってくれィ!」
「嫌アル!!ペンギンなら地面滑るヨロシ!!」
「あった!!あの時の倉庫でさァ!」

二人の目の前に倉庫が見えてきた。あの時は暗くてよく見えなかったが結構大きい倉庫だった。

「ほんとアルカ?!ちょっとでかくないアルカ?!」
「そう思うなら外で蜂の巣になってろィ!」
「嫌アル!ハチミツまみれになったら何たらプーさんの標的にされてしまうネ!!」

倉庫の前まで来ると神楽は傘を振り上げ扉に向かってを殴った。鉄がヘコむ音と共に扉が開くと同時に二人はその中へ入り込む。もちろん警報は鳴ったがお構いなしだ。

「?」
「ん?」

二人が倉庫内に入った途端銃撃が止む。

沖田が不思議に思い振り向いて外を覗いてみると、警備の天人達がこちらを見て何やら戸惑っていた。

「何でィ?」

入っても来ないなんて、沖田は不気味に思い怪訝な顔をする。一方、神楽の方は得意げに「諦めたアルナ」と鼻で笑い辺りを見渡していた。

「何アルカ?これ」

外見からは倉庫だと思っていたが中は様々な機械が設置され、棚には沢山の本や色とりどりな液体が入った瓶など並んでいた。

追跡して来ない警備員が気にはなるが、だからといって出るわけにもいかない。沖田は首を捻りつつも中に進んで行った。

「面白そうアルナ」

神楽は目をキラキラさせながら機械のボタンを見る。

「変なボタンを押してピンチに陥るとかそんな王道パターンは勘弁しろよ」

「あちぃ…」と呟きながら沖田はペンギンの着ぐるみを脱いだ。中から姿を現した服装は真選組の隊服ではなく私服だ。

「もしかしてここで偽物造ってるアルカ?」
「さぁ…」

着ぐるみを脱ぎ終わった沖田はキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。

隅の方に下に続く階段があった。もしかしたら地下にあの老人がいるかもしれないと沖田は考え階段の方に行く。

「コラ、待つアル」

下に行こうとする沖田に神楽が駆け寄ってきた。

「…その両手いっぱいに抱えているガラクタ置いてきなせェ」
「えっ?!」

吃驚する神楽の胸元には光る石やら変な置物やら使用目的が不明な小物が山盛りになっていた。沖田は呆れた顔で溜め息を吐く。

「勇者はタンスの中や壷の中の物を取っても許されるアル」
「あれは勇者という名の強盗でィ。つかおめぇは勇者じゃねェ」
「使えるものがあるかもしれないネ」
「あぁ、おめぇの脳みそよりかは使えるかもしれねェな」




結局、窃盗罪にあたるからと沖田に言われ断念した神楽は頬を膨らませながら階段を下りる。

「こんな時はケーサツになるんだナ」
「俺はどんな時でも庶民のヒーローでさァ」
「そんな事は言ってないネ」

地下には神楽の背丈半分ぐらいのロボットが数十体並んでいた。神楽が「おぉ!」と声を出し階段を駆け下りていく。

「何だか今にも動き出しそうアル!一体持って帰って新八二号にするネ!」
「もう窃盗罪で現行犯逮捕していいかィ?」

沖田が階段を下り終わると同時に後ろからシャッターが下りるような音がした。

「…ん?」

何か嫌な予感がし、沖田は後ろを振り返る。


「わあぁっ?!」

突如神楽が声を上げた。何の音か見に行く為に再び階段を上がっていた沖田が「え」と振り返る。

「キィィー!!!」
「!」

先程のロボットが沖田の目前まで両腕を上げ飛んで来ていた。咄嗟に横へ飛ぶ。ロボットはガシャンと機械音を出し階段に降りたった。さらに違うロボットが腕を振り上げ飛んで来る。沖田は蹴りを食らわし階段の下へと落とした。

「本当に動いたねィ」
「召使いにはもうちょっと大人しいロボットが良いアル」

神楽は傘を振り回して数体のロボットを薙ぎ倒す。壁に叩き突けられたロボットの目が光を失い地面に落ちた。


「フン。一体一体は大した事ないアルナ。どちらが多く倒せるか勝負ネ」
「あぁ」

沖田は神楽の言葉にニヤリと笑い抜刀した。






戻る

- ナノ -