友情

31

「凄いですねィ、旦那。こんな時でも依頼受けるなんて」
「公務員には分からんよ、自営業の大変さは」

依頼人が帰った後、再びペンギンの被り物を取った沖田は支度をしている銀時を見る。

「今回の依頼は大人の場所に行かなきゃならねぇ。神楽と新八は留守番な」
「らぶほてるって何アルカ?」
「男と女がセ」

スパーン!!良い音を立て亜麻色頭にハリセンがヒットした。

「変な事吹き込まないでくれるかな?沖田君」

銀時がハリセンで肩を叩き顔に青筋を浮かべている。沖田の発言に顔をひきつらせていた新八が突如「あ、しまった」と声を上げた。

「姉上に用事頼まれてたんだ!帰らなきゃ!」

銀時が支度をしている横で新八も焦りながら帰る支度をし始めた。

「へ?」
「ん?」

神楽と沖田が目を丸くする。

「んじゃ、そんな難しい依頼じゃなさそうだし、さっさと終わらせてくるからちゃんと留守番しとけよな」
「僕もできるだけ早く済ますから喧嘩しちゃダメだよー」

銀時と新八は万事屋を出て行く。

「…」
「…」
「ワン!」

二人と一匹は閉じられた玄関を見つめた。

少し気まずい沈黙が流れた後、神楽がソファにドカっと座る。

「…今も私の偽物が暴れてるアルカ?」
「さぁな…おめぇ、ひと月前に幕府の敷地に潜入した事覚えてるかィ?」

神楽は頬杖を付き考え込む。

「あぁ…あれアルカ?」

そう言い神楽は指を差した。その先には棚の上にある黒い石が二つ、石像と戦った時に出た石と泥人形と戦った時に出た石がある。

「そうそう。その時変なジジィに言われたろィ?強い人造人間作りたいだの俺らのデータが取れただの」
「!!それアルカ!」

神楽は手の平に拳をポンと叩き目を大きく開く。

「なら話は早いアル!あのジジィをボコボコにしてやるネ!」
「そうやって簡単に決断できるおめぇが羨ましいわ」

不機嫌そうに沖田は神楽から顔を背ける。

「何で?」
「幕府に仕える真選組だぜィ?おめぇも陽紀から聞いただろ。幕府という主人に楯突く犬はバカだって」
「だからって自分の姿を勝手に使って殺しやってるアホを放っておくアルカ?」

腰に手を当て眉間にしわを寄せながら神楽は言う。

「俺だって放置は嫌でさァ。今、山崎が証拠を掴みに行ってるようだから待ってるんでィ。幕府の人間と言えども民間人、真選組隊士、幕府の官僚の殺害に関与していたって事が分かれば堂々と捕まえられ」
「そんなの待っていられないアル。待っている間にまた私の姿で殺しをさせられちゃあ胸クソ悪いネ!」

そう言うと神楽は傘を肩に担ぎ万事屋を出て行こうとする。

「おい、待てよ!」

沖田がソファから立ち上がり神楽の肩を掴む。神楽はその手を振り向き様に払い沖田を睨んだ。

「待ってるなら待ってるヨロシ。意気地なし」

神楽はフンと前を向き万事屋を出て行く。

「…意気地なしぃー…?」

沖田の顔が歪みピキリと青筋が浮かぶ。


「化けて出てきたって事にしてやらァ!」

沖田はペンギンの着ぐるみを被ると神楽の後を追った。






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