友情

30

沖田が万事屋から出て行った次の日の朝、銀時は玄関の戸を叩く音に気付き、来客か、と欠伸をしながら開ける。

「はぁーい…どちらさ…」

と、言い掛けて目に入ってきたものに絶句する。ペンギンの着ぐるみを被りサングラスを掛けた怪しい人物が立っていた。

エリザベスの親戚か?…どちらにせよ無視をしておくに限る。銀時はそっと戸を閉めようとした。

「旦那。俺、俺」
「俺俺なんて子知りません」

ペンギンに背を向けて万事屋内に入ろうとした時、目の前に紙が三枚現れる。

「!!…ス、ストロベリーパフェ食べ放題券…だと…っ?!」






「いやぁ…二日連続で糖の神様が降臨なさるなんて」
「もういい加減にしろよ糖尿病患者」

ペンギンの横に座る銀髪に新八はキツい突っ込みを浴びせる。

「いや、糖尿病じゃないし、寸前なだけで」
「凄いアルナ。本物の糖の神様ってペンギンアルカ」

神楽がまじまじとペンギンを見つめ、ペチペチと頭を叩いた。
ふとそのペンギンが平たい手を前に出す。

「?」
「宿題」
「!」

神楽は驚き目を大きく開けた。後退りをしわなわなと体を震わす。

「と、糖の神様じゃないアル!!Sの神様アル!!」
「そりゃそうだろィ」

頭だけペンギンの被り物を取りサングラスを外すと亜麻色の髪の毛が出てきた。怪訝な顔をし銀時は首を傾げる。

「どうしたの?真選組クビになってバイトでも始めた?」
「いや、俺死にやした」

万事屋三人組の目が点になる。神楽が傘を取り出しバコッと亜麻色頭を殴った。

「いってぇな!クソチャイナ!」
「生きてるネ」
「だから死んだんだって」
「そんな事を言う口はこの口アルカ」

無表情で神楽は沖田の口の両端を持って思い切り引っ張る。

「いたいいたい、はなすから」






「はぁ…多串君って無茶苦茶だねぇ…」

沖田の話を聞いて銀時は呆れたような顔で溜め息を吐く。

「全くでさァ。それで屯所から一歩も出るなとか言うんですぜィ?」
「出てるじゃん」
「山崎のいない屯所なんて抜け出すのは簡単でさァ」

あっけらかんと話す沖田を見て銀時は少し保護者達が哀れだと思った。

「…で、そこの頭空洞女。真犯人分かったのかィ?」

沖田は目の前の神楽を見る。神楽は「フン」と鼻で笑い、

「神楽様を甘くみないでほしいアル」
「ほぉ、分かったのか?」
「カレーは何を入れても美味しいネ」
「カレーの前におめぇの頭の中に何か入れろ」

別に期待はしていなかったが、というかもう犯人の目星は沖田にはついている。
自分も昨日思い出した事なのだが、その事を話そうと口を開きかけたその時、ふと玄関の方から戸を叩く音と「すみませーん」という声が聞こえた。

「あれ?お客さんだ」

新八が玄関の方まで行く。


「土方の奴じゃないんですねィ。良かった」

沖田は玄関の方を見てホッと安堵した。

「しかし、多串君て仲間思いだよねー」
「ん?」

銀時がニヤニヤと笑いながら沖田を見る。

「だってあんな作戦仲間信じてないとできないしさー。前にここ来た時の熱弁も銀さん感心しちゃったよ」
「はぁ…」

人の裏をかくただの嫌な奴だと思うが、沖田は目を丸くして銀時を見た。

「良いところだな、真選組って」

「ぎぃーんさぁーん!!!」

銀時達が話していると新八が慌てて入ってきた。

「何だよ、新八。お通ちゃんだったのか?」

銀時は面倒臭そうに顔を歪め眼鏡の少年を見る。

「そうだったら良いですけど違います!」
「だったら何?」
「依頼ですよ依頼!」

新八の後ろにいる商人風の男が銀時に向かって頭を下げる。

「…な、何ィー??!!」
「すみません…何か取り込み中でしたらまた…」

銀時は勢いよく立ち上がり商人風の男に近づいた。

「いえ、大丈夫です。こちらへどうぞ」
「そちらのペンギンはいったい…」
「糖の神様です。この万事屋の守り神ですよ」






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