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しばらくの間、激しい攻防が繰り広げられた。互いの衣服があちこち破れ所々血が滲んでいる。
本当にどちらかが死ぬまでやる気なのか、沖田が何を言っても無言で返す永倉を見据える。
永倉は肩で息をしつつ刀を構え沖田に向かって来た。振り下ろされる白刃を凌ぎつつ沖田も反撃に出る。
突如、どこからともなく刀が何かに当たる金属音がした。
「!」
一瞬永倉の動きが止まる。
その透きを逃さなかった沖田は永倉の胸ぐらを掴み足払いを掛けそのまま押し倒した。
「ぐっ!」
背中を地面に打ち付けられ永倉の顔が歪む。胸ぐらを掴んだまま馬乗りになりその首に刃身を当てた。
「!」
「…そろそろ終わりやすかィ」
瞳孔が開き気味の沖田は息を切らしつつ呟く。永倉の首が数センチ切れ血が出てきた。
その刹那――
ドカァーーン!!!
二人の真横で爆発音がした。
「!!」
沖田は我に返ったように吃驚して目を見開き横を見る。周りが土煙や白煙で覆われ見えなくなった。
咄嗟に刀を持つ方の腕で目を庇う。その腕を何者かが掴んだ。
「!」
「こっち」
聞いた覚えがある声と共にぐいと引っ張られる。
「???」
さらに横から永倉の体の上から退けるように押された。
「え?え?え?」
沖田は訳も分からず引っ張られるがまま走った。相手は黒い布を被っていて何者かは分からない。
(敵?味方?何?)
考えがまとまらないまま近くの路地裏まで連れて行かれる。
路地裏に入ると黒い布を被った者は掴んでいた沖田の腕を離し両肩を下に押して座らせた。
「はぁ…疲れた」
そう呟き黒い布を取る。
「!!…武田!!」
大きく開いた目で見上げ指を差した。武田が溜め息を吐き少しズレた眼鏡を直す。
そこへ何やらギャーギャー喚きながら二人組が駆け込んできた。
「バカチビ!!やりすぎだチビ!!見てるこっちが死にそうだったわ!このチビ!!」
「チビって言った回数だけ後でデコピンな」
武田と同じ黒い布を被ったまま永倉に怒鳴り散らす男、
「凹助!!」
沖田に気づき男が黒い布を取るとバンダナ頭が出てきた。
「よ!」
藤堂はニカっと笑い手を挙げる。
「は?何?どうなってるんでィ?」
三人を見回し沖田は頭の上をはてなマークで散らした。
「もう、危険なドッキリよねぇ…」
武田が頬に手を当て再び盛大な溜め息を吐いた。
「寿命が縮んだ。10年は縮んだ」
藤堂がギブスをはめていない手をポケットに入れ首を横に振る。
「もう疲れたよ…」
永倉は情けない声を出し壁にもたれ滑るように座り込んだ。
「いや、だから何?訳分かんねぇんだけど?」
さっきまでの殺伐とした雰囲気は何だったんだ、沖田は出し放しだった刀を納める。
「副長よ」
「無茶ばっか言いやがる」
武田は眉を下げて藤堂は顔をしかめる。
「土方さん?」
益々分からない。自分は幕府の官僚を殺した為に粛清されるんじゃなかったのか?
「局長と副長が本庁に行った後でね…」
武田が今までの粗筋を話し始めた。
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