友情

25

――プルルル


「あ」

沖田は自分の着信音で我に返った。

「うわぁ…何?多串君?」
「正解」
「神楽ちゃんの事でしょうか」

銀時と新八が沖田の手元にある携帯電話を覗き込む。

出ようか無視ろうか、沖田は液晶画面を見つつ考えた。



…のは一秒間だけ。

無言で電源ボタンを押した。

「あ、切った」
「しまった!条件反射でつい」

銀時が思わず突っ込み、沖田は目を大きく開き口元に手を当てワザとらしく声を上げる。


――プルルル


「ま、そうなるよな」
「…」

仕方ない、沖田は溜め息を吐き通話ボタンを押した。

銀時達に向かって口元でひと差し指を当て黙っててというジェスチャーをする。

「も…」
『なぁぁに切ってんだコラァァァ!!!!』

顔をしかめ携帯電話を耳元から離す。銀時達にも土方の怒鳴り声がしっかりと聞こえてきた。

「土方さん、俺の鼓膜が切れそうです」
『今どこにいる?』
「どこ…って…」

万事屋って言ったら何でチャイナ娘殺らねぇんだとか言われるかな、どうやって誤魔化すか、そんな事を数秒考えた。



…のが、多分マズかったのだろう。



『…今朝言っていた天人の父親が殺された』
「!」

また神楽もどきか、と電話の相手に聞く為、口を開こうとした。




『防犯カメラにお前が映っていた』
「…え?」

思いもよらない言葉に沖田はどきりとした。周りで聞き耳を立てていた万事屋三人組も驚き沖田を見る。

『今、俺は近藤さんと本庁にいる。お前は先に屯所に戻ってろ、分かったな!』

そう土方は一方的に言い、終わると同時に通話が切れる。



「…」

沖田は通話の切れた携帯電話を片手に呆然とし、瞬きをする。三人も無言で沖田を見る。


「…結構マズい事になってない?」
「えぇ、もうかなり」

銀時の問いに沖田は困ったように肩を竦める。

まさか自分の偽物まで現れるなんて。

「でもこれで殺人犯が神楽じゃないって分かったな」

銀時はニヤリと笑い桃色頭にポンと手を置いた。

安心したのか神楽は銀時を見上げ微笑み「私に化けるなんて身の程知らずネ!」と言い側にあった愛用の傘を持ち沖田の方に傘の銃口を向ける。

「とりあえずこの目の前にいるサドの偽物は私にまかせるアル。滅多打ちにしてやるネ」
「そうかィ。じゃあ俺はチャイナの偽物でもやろうかねィ」

沖田もバズーカを取り出し神楽に向けた。新八はそんな二人を見て「こんな時でも喧嘩しようとするんだね」と呆れる。

「誰がこんな事してるのか知りやせんが…多分屯所では今頃幕府様に楯突いた俺の首を持って来いと上から言われてまさァ」

沖田は溜め息を吐きバズーカを置いた。銀時は腕を組み「うーん」と唸る。

「っていうか、何でお前等なの?二人で何かした?」
「んー…」
「お前帰らなくていいアルカ?そんなの考えてないで無実証明してこいヨ」

沖田の目の前にいる神楽が眉間にしわを寄せ亜麻色の頭を銃口でツンツンとつつく。

「じゃあ俺の代わりに真犯人を考えてくれィ。その空洞の頭で」
「分かったネ。考えておくから行くがヨロシ。私以外にその首取られるのは勘弁してほしいアル」

沖田は「え」と思わず声が出る。てっきり誰が空洞だとか何とか食ってかかると思っていた。瞬きをしながら神楽を凝視する。

「…な、何見ているアルカ…!早く行くがヨロシ!」
「何?お前。いっちょ前に沖田君の事心配し…グハァ!」

銀時の頬に神楽の右ストレートパンチが炸裂した。派手な音を鳴らして銀時が吹っ飛ぶ。



「…バーカ、俺の首は誰にもやらねーよ」

沖田はニヤリと笑い神楽の額を指で弾く。

「明日の朝また来るからそれまでに答えを半紙一枚分書いておきなせィ。これ宿題」

そう言い額を押さえている神楽に背を向けると万事屋を出て行った。






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