友情

24

戦闘はお登勢の怒鳴り声で終結し、銀時達は散らかった万事屋内を片付けていた。

「あぁ…やっぱりここに置いておくんじゃなかった…」

割れたお通のアルバムを手に新八は涙を流す。隣では空になった容器を手に「スペシャルあんみつが…」と涙を流す銀時がいた。

「銀ちゃん、新八、その悲しみを踏み台にして大きく羽ばたくアル」
「おぉ…悲しみのない自由な空へ行きたいよ」
「俺もこの翼を広げて大空に飛んで行けそうでさァ」

窓を開けて空を見上げる沖田の背中に作り物の羽根がある。

「あぁ!!それはお通ちゃんのコンサートで使う天使の羽根ぇぇ!!!」
「何でそんなもんまでここに置いてんの?」

沖田に向かって叫ぶ新八を銀時は白い目で見た。






「この神楽様を殺るなんて銀ちゃんが糖分摂取を止めるぐらいに有り得ないアル」

ソファで胡座をかいている神楽は目を細めジッと沖田を見る。
片付けが終わった頃にはもうすっかり辺りは暗くなっていた。

「神楽ちゃんを殺しに来たのは沖田さんだけなんですか?」

新八の問いに沖田は「ん?」と首を傾げる。

「俺、殺るなんていう命令受けたつもりねぇぜィ」
「え、じゃあ何でここに来たんですか?」
「何となく」

そう言うと沖田は横に顔を背けた。
神楽は目を丸くしてそんな沖田を見ていたが「あ」と何か思い出したかのように声を出した。

「ボディーガードしてくれるっていうアルカ?」
「…どこかで聞いた事があるセリフだねィ」

意地悪そうに笑いながら自分の顔をのぞき込む神楽に沖田は嫌な顔をする。

「大体、いつも首狙ってるからねぇ。俺に言われても正直今更って感じがしまさァ」

亜麻色の頭をボリボリと掻く沖田を銀時はニヤニヤと笑いながら耳をほじる。

「素直に心配してたって言えば」
「旦那、実は俺もスペシャルあんみつ買ってたんでさァ」

沖田は懐から‘限定!スペシャルあんみつ’と印刷してある容器を取り出す。

「お、おおぉぉ???!!!」

銀時は眩しい物を見るかのように目を細め腕で顔を庇った。

「おおおお沖田君、いや沖田様、いや総一郎様」
「総悟です」
「総悟様、それ…」
「こんな物も…」

さらに沖田は懐から‘チョコレートパフェ食べ放題券’を三枚取り出した。

「か、神が降臨なされた…糖の神が降臨なされたぞォォ!!!」
「いやぁ、日頃から何かと世話になっていやすからねぇ。今晩も泊めてもらいやすし」
「新八!!糖の神様に極上の羽毛布団を出して差し上げなさい!!」
「ありません。そんな物」

新八は呆れた顔で銀髪を見る。神楽はというと嫌そうに顔を歪め口の端をピクピクとひきつらせていた。

「何でこいつと同じ屋根の下で寝なきゃならないアルカ!!」
「ならおめぇは屋根の上で寝ろ」
「地の中で永眠するがヨロシ」

二人の間で火花が散る。そんな二人を見た新八は明日来た時万事屋は無くなっているのではないか、という不安が脳裏をよぎった。


「つーかさ、ぶっちゃけ犯人は誰なの?」

銀時は沖田からもらった券三枚をペラペラと揺らせながら言った。いつまでも身内が大量殺人犯の容疑者扱いじゃあたまったもんじゃない。

「んー…昨日の夜に実際ウチの隊長三人が会って捕縛を試みたらしいんですが」
「ちなみにウチの神楽は爆睡してたぞ」
「カレーになった夢を見たアル。ごっさ良い気分だったネ」

そんな神楽の言葉は聞き流し沖田は話を続けた。

「体がやけに冷たく急所が効かなかったらしいですぜィ」
「ロボットみたいだな」
「…ロボット?」
「そうそう。だって血通ってないから体は冷たいだろうし、機械だから急所を打っても意味ないだろ?」
「!」

銀時の言葉を聞いて何かひっかかった沖田は考え込む。

大切な事を忘れているような、






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