23
昼過ぎの公園、相変わらずひとつの遊具に青いビニールシートが覆っている。一部の親子は沖田の顔を見た途端、慌てて去って行った。
連日公園で喧嘩していたらそうなるのも当たり前である。
沖田はそんな事は微塵にも気にせずにある人物を探していた。
「おーい」
向こうの方から銀髪が沖田に向かって手を振る。
「旦那」
「ちゃんと読んだぜ。洒落た真似するねぇ」
ニヤリと笑い銀時が飴の包み紙を沖田に見せる。そこには‘明日13時公園’と書かれてあった。
「でもイチゴ味の飴の中にタバスコが入ってたんだけど…何?あの甘さと辛さのコンビネーション」
「癖になるでしょ?」
「ならねーよ。銀さんの口の中一瞬火事になったんだぜ?」
「旦那の口の中乾燥してやすねぇ」
「お前の頭の中程じゃねーよ」
一通りボケ突っ込みを終えた後、沖田は「座りやせんか?」とベンチを指差す。
「ハゲ頭知りやせんか?」
沖田がベンチに座るなり銀時に聞いた。
「ん?あぁ…あの人、原田さんだっけ?」
「そそ」
「いや、知らない。何かあったの?」
二人は前を向いたまま話している。
「こっちの話ですよ」
「ふーん」
銀時は鼻をほじりながら横目で沖田を見る。
「…チャイナはどうしてやす?」
「普段通りだぜ。今朝も飯五合全部食べやがった。パチンコで勝った分パーだよ。助けて沖田君」
「ご愁傷様」
沖田は顔の前で拝むように手を合わせた。そして頭の後ろで手を組み上を見上げる。
「んでね。今日朝っぱらから幕府様よりチャイナの首を取ってこいっていう命令がきましてね」
「…へぇ」
鼻をほじっている銀時の眉が一瞬ピクッと動く。
「今から万事屋行って良いですかィ?」
「それでオッケーって言うと思う?」
「思いませんねぇ」
沖田は空を見上げながら溜め息まじりで言った。
「命令が嫌で家出してきたんですがねィ」
「どこの反抗期の子供ですかコノヤロー」
「その子供にこんな寒空の中野宿させる気ですかィ?」
「都合の良い子供だこと」
銀時はハァと溜め息を吐き取れた鼻くそを弾く。
「わぁーったよ。来れば良いだろ」
「わぁーい」
「感情がこもっていない喜び方だな」
「…という訳で寒空の中、町をさまよう子をつれて来たんよ」
銀時が万事屋のソファに座って足を組む。新八がその隣で立って前を見据えていた。
「…銀さん。神楽ちゃんの命を狙っている人を入れるなんて…っていう問題以前に…」
二人の目の前に本が飛ぶ。
「こんのクソサド!!私のイチゴケーキにタバスコなんぞかけやがって…殺すアル!!」
「寒そうだなぁと思ってかけてやったんでィ。これで体の芯からポッカポカ」
「体の芯までボッコボコにしてやるわァァ!!!」
神楽が青筋を立て傘を振り回しながら沖田を追いかける。
「…あの人、命を取られに来たんですかね」
「ま、良いんじゃね?あれから神楽元気なかったし。やっぱ子供は元気にはしゃぎ回らなきゃねぇ」
二人の目の前を色んな物が飛び交う。
「いや、まぁ…確かにそうですけど………ってコラァァァ!!!!お通ちゃんのアルバム投げるなァァァ!!!!!」
新八がどこからともなく竹刀を取り出し二人の喧嘩に怒鳴りながら入って行った。
「…」
銀時はボーッと目の前で繰り広げられている攻防戦を見つめる。
怒鳴り散らす眼鏡の少年はともかく亜麻色と桃色はどことなく楽しそうだ。
――やっぱこうでなくっちゃなぁ。
銀髪の頭に何かがコツンと当たり目の前に落ちる。
「!!」
それを見た銀時は拳を握りふるふると震えさせた。
「こ、これは…パチンコで勝った金で買った江戸限定10個販売のスペシャルあんみつじゃねーか!!何で空なのォォ??!!」
「あ、戦闘時の体力補給に食べやした!隊長!」
「私も食べたアル!隊長!」
ヘルメットを被った沖田と神楽が銀時に向かってビシッと敬礼をする。
「…そうか。よし、お前等にこの隊長が直々に戦闘の仕方を教えてやるわァァ!!!」
顔に青筋を浮かべた銀時が叫びながら木刀を持って立ち上がり攻防戦に入っていった。
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