17
画面の中にいる神楽と思しき人物は倒れた天人に背を向け画面から消えて行った。
「だろ?なぁんか見た事がある子だなぁーって思ったわけよ。あ、ちなみにこれ弾だ」
松平は数個の鉛弾を机の上に転がした。土方はそれらを一瞥すると松平を見据える。
「…で、捕まえに行けと」
「そういう事になるな。またその殺された天人の父親がご立腹でなぁ。すぐ捕まえろやら何やら喚き散らしやがって…」
松平は耳をほじりながら眉間にしわを寄せる。
「しかし…にわかには信じがたいんだが…」
近藤は困惑した表情で腕を組む。そんな男を松平は睨み据えたまま懐から銃を取り出し銃口を近藤に向ける。
「近藤。これまた俺の首かかってんの。お前等のせいで何回取れかかってんだと思ってんだ?あぁっ?!」
ドスの利いた声で怒鳴り机を蹴った。ガシャンという音と共に置いてあった茶がこぼれる。
「とりあえず連れてくるだけ連れてこい。分かったな」
近藤は困ったように隣の男を見る。土方は深く溜め息を吐いた。
「うーん…。チャイナさんの双子とか?」
近藤は本庁の帰りの車内で腕を組みながら首を傾げる。
「そんな人を殺すような子には見えないんだがなぁ。本当に総悟はそう言ったのか?」
そう言い運転席の土方を見た。
「あぁ。本人は面白いぐらいに否定してたがな」
「しかし防犯ビデオを見せられては否定のしようがないなぁ…」
決定的な証拠だ。
土方は溜め息を吐く。
「念のため朝までにもう少し解析してはみるが…」
あの亜麻色が何て言うか。万事屋の保護者もうるさいぐらい否定するだろう。
ドSコンビの事を思うと頭が痛い。
土方はハンドルを持っていない手でこめかみを押さえながら顔をしかめる。
「…もうこんな時間か。結局通夜には出てやれなかったなぁ」
近藤は車内の時計を見る。21時を回ったところだ。
「明日は葬式どころじゃないぞ」
「…そうだな」
約一ヶ月ぶりの真選組屯所は何だか暗い。雰囲気がどん底に暗い。
(…仕方ないか)
多数の同志が正体不明の者に殺されたというのだから明るいわけがない。
首から下げた布にギブスをはめた左腕を入れバンダナ頭を右手で掻きながら局長室に続く縁側を歩く。
大体局長は6日で退院できたのに、なぜ自分は一ヶ月も入院していたのだ。絶対あの中太りの女のせいだ。
ハァと溜め息をつき前を見ると局長室の前にポニーテールの青年と小柄な青年が立っていた。
「よ、ただいま」
「あ、凹助おかえりー」
「…お前、とことんついてないな」
藤堂が二人に手をあげて挨拶をすると斉藤は同じく手をあげて返してくれたのだが、永倉は顔を歪め哀れんだ目で見てくる。
「何?」
そりゃあこんな状況時に退院祝いをしてもらおうなど微塵も思ってはいない。
不思議そうに永倉を見ると無言で局長室を指差した。
「…」
局長室からビリビリとした殺気が伝わってくる。
「違うって言ってんだろ!!」
中から沖田の怒鳴る声が聞こえてきた。
「…もう一回入院して来ようかなぁ」
「この中に入ってオヤジギャグ一つ言えば願いは叶うぜ」
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