友情

13

沖田はその傘を持ち上げると表面を見つめた。血痕も付いていなければ血の臭いもしない。やはり思い違いか?

一方、神楽も刀を拾い上げジーッと刀身を見つめていた。

「…これで人を殺すんだナ」

顔をしかめ沖田を見ると「五秒経ったアル!」と叫ぶ。

「なぁ、これどうやって弾出すんでィ?」
「オイ、コラ、聞いてるアルカ?」
「こうかねィ」

そう言うと傘を地面に向ける。

「え?」


――バン!


「…」
「…」

一瞬二人の動きが止まった。


神楽はフーと息を吐くと手に持っていた刀を両手で構え、

「くぉらァァァ!!私の魂撃ったナ?!撃ったアルカ?!」

そう叫び沖田に向かって刀を振り下ろした。それを沖田は傘で受け止める。

「いつもと逆」
「ななな何かお菓子アル!今日のお前お菓子ネ。負けて頭お菓子になったアルカ?!」
「いやぁ…至って真面目でさァ。つか俺はお菓子じゃねぇ。あ、返すぜィ」

そう言うと刀を弾いた傘をそのまま神楽に差し出す。

「何?どうしたアル?」

怪訝な顔のまま傘を受け取ると持っていた刀を返した。

「んー…おめぇに似た奴を見た」
「はぁ…」

それと傘どういう関係があるというのだ、受け取った刀を納めている沖田を見る。

「なぁ…一昨日の夕方何してた?」
「…買い物に行ってたネ」
「昨日の昼過ぎは?」
「散歩。途中でパチンコ店にいる銀ちゃん見つけて一緒に居たアル」
「ふーん…」
「ふーん…じゃねーよ。頭大丈夫カ?」

神楽は顎に手をやり俯いて何か考えている沖田の顔をのぞき込む。


「なぁにしてんの?お二人さん」

ふと間延びした声が聞こえた。二人は声がした方を見ると銀髪の男が手を振りながら近づいてくる。

「旦那」
「銀ちゃん!サドがお菓子になったアル!」
「うーん…。栗のモンブラン?甘くはなさそう…」

銀時は腰に手を当て亜麻色頭の子供を見る。

「じゃあ旦那はそのモンブランの下に付いている銀紙ですねィ」
「ふ、ふん…!あの銀紙がなきゃケーキ取るのに苦労するよ?滑るように取れないよ?良いの?」

銀時はそこまで言うとハッとなり神楽の方を向く。

「志村家に行く予定だったんじゃねーの?」
「あ!」

目を大きく開け手の平に拳をポンと打つ。

「忘れてたネ!行ってくるアル!……オイ、コラ」

神楽が沖田の方を見据え傘の銃口を向ける。

「次に会う時まで人間に戻っとくヨロシ」

きょとんとしパチパチと瞬きをする沖田に背を向け神楽は走って去って行った。


「旦那」
「ほい」
「俺、人間ですよねィ?」
「うん。ちょっと疑心暗鬼気味だけど」
「!」

弾かれたように銀時を見る。

「いや、銀さんもよく事情分からないけどさ。あんな探るような目で尋問してりゃあそう思うよ」
「ですか…」

困惑した顔で沖田は溜め息を吐く。この人は本当によく見ている。死んだ魚のような目をすればこんな洞察力が出るのだろうか。

「どうしたの?ウチの神楽何かした?」
「あ!福の神がチョコレートパフェをばらまいている!!」
「何?!」

沖田が上空を指差す。銀時が見上げると真っ青な冬の空が広がり天人達が持ってきた鉄の固まりが飛んでいた。

もちろん福の神など飛んではいないしチョコレートパフェも降っていない。


そして沖田もいなくなっている。




「…これ、何てデジャビュ?」






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