友情

12

懐から布を取り出し刀身を拭く。カチンと刀を納めると布ごと両手をポケットに入れ空を見上げた。


「最強のストーカーって何ですか?」


突如後ろから声がした。沖田は驚いたように目を開き振り返る。そこには黒と白の私服を着た山崎が立っていた。

「…おめぇが今やってる事を言うんでィ」
「褒めてるのか貶してるのか」

溜め息を吐き山崎は頭と体が離れた友田の亡骸を見る。

「…介錯のような斬り方でしたね」
「Sは打たれ弱いんでィ。…何の痛みもなく一瞬で終わるやり方はこれしか思い付かなかった」

「それに…」と言うとしゃがみ友田の開いたままの目を閉じさせる。

「首さえ縫えば外も中も綺麗なもんだぜィ」
「…」
「生き返るかもしれねェ」

この子供なりの気配りだろうか、しゃがんでいる亜麻色の頭を見て山崎は胸がつまるような思いがした。

「志が違った…それだけの事だったんですよ」
「あぁ…とんでもねぇ違いでさァ」

沖田は立ち上がり山崎を見る。

「土方からの命令で来たのかィ?」
「いえ」

山崎は首を横に振り眉を下げ微笑んだ。沖田は「ん?」と目を丸くする。

「心配で見に来たんですよ。余計なお世話でしたね」
「…全くでィ」

俯いてそう呟き山崎から顔を背ける。
山崎は小さく溜め息をつき再び微笑むと携帯電話を取り出した。

「後はまかせて下さい。あ、副長が終わったら来いって言ってましたよ」
「えー…」
「ちゃんと行って下さいね。後、もうあのマヨ型ライターに悪戯しないで下さいね。あれ特注で結構高いんですよ」
「はいはい」

母親バージョンに変身した山崎を適当に流し階段の方へと足を運んだ。

半壊した鳥居が目に入る。


(今日こそあの女に会うか)


土方は後で良いや、沖田は長い階段を降りた。








友田を粛清し、そのまま公園に寄ると桃色頭のチャイナ服を着た少女が傘を片手に酢昆布を食べていた――神楽だ。

沖田は「あ」と思った瞬間バズーカを構え標的を桃色に合わす。

「居たァァァ!!!!!」


――チュードォーン!!!


公園のど真ん中が一瞬炎上し白い煙が舞う。

周りに居た子供や親達は悲鳴を上げ逃げ出した。

「ななななな…!!」

バズーカの砲撃を避けた桃色頭が膝をついて歯を食いしばり地面の土を掴む。

「……いきなり銃器とは良い度胸ネ……私の酢昆布が真っ黒黒助になったアル!!どうしてくれるネ!!」
「目玉をほじくれば良い」
「お前の目玉ほじくったるわァァァ!!!」

神楽が飛び傘を振り上げる。沖田はそれを抜刀し刀でガキンと受け弾くとそのまま手首を捻り神楽に向かって刀を車にまわす。

神楽は一瞬顔をしかめ後ろへ飛びそれを避けた。


「…血の臭いがするネ」
「斬りたてホヤホヤ」
「暖かご飯みたいな乗りで言うなヨ、アホ」

傘を構えながら目の前にいる男を白い目で見る。

「その傘貸せ」
「はぁ?!」

突如沖田が手を前に出し言った言葉に神楽はこれでもか、という程顔を歪ませ声を上げた。

「ブサイク。良いから貸せって」
「意味が分からないアル」

そりゃそうか、沖田はそう思うが人殺しの犯人かもしれないとかそんな事を話すわけにもいかない。

「十秒」
「いや、だから何で渡さなきゃいけないアルカ?」
「じゃあ五秒交換」

持っていた刀を神楽の前に放り投げる。カシャンと音を立てて地面に落ちた。


「???」


益々分からない。刀は武士の魂とか銀時から聞いた事がある。それを放り出して良いのか。


神楽は何だかいつもと違うライバルに怪訝な顔をしながらも構えてた傘を下ろすと、

「五秒ネ!」

そう言い沖田と同じく傘を放り投げた。






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