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「良い店がある。一緒に行こうぜィ」
「沖田さんも非番ですか」と言い友田は沖田と一緒に私服で江戸の町を歩く。
「ちょっと外れにあるんでさァ。SMグッズなんてあまり堂々と買うもんじゃないだろ?」
「確かに」
沖田の言葉を聞き友田は苦笑する。
「あれかい?やっぱ奥さんはM?」
「えぇ、もちろん」
段々人気がなくなってきた。周りは木が生い茂り目の前に長い階段がある。
「これ上ったところでさァ」
「神社っぽいですね」
「昔はそうだったみたいだねェ。亡くなった神主さんの後継ぎがいなかったって聞いた事があるぜィ」
友田は「ふーん」と呟き沖田の後を続いて上る。
階段を上がった所には古びた家が建っていた。半壊した鳥居がある。
「確かに神社だったって気がしますね。でも何で鳥居が壊れているのでしょうか?」
地面に突き刺さっている石の固まりを見る。
「あー…俺がやった」
「え?!」
以前、神楽とここで喧嘩し、後で二人仲良く銀時に叱られた事を思い出す。
「そういや、あのマヨ型ライター。大成功だったぜィ」
「マジですか。俺あぁいう細工は得意なんですよねー」
「へぇー…だから爆弾なんかも作れるのか」
「え?」
二人の足が止まる。沖田が振り向くと驚いたように目を大きく開けている友田が目に入った。
「ま、まぁ…そりゃあ作ろうと思えば作れると思いますが」
「チビには気を付けた方が良いぜィ。人の死角ばっかついてきやがる」
「!」
友田の頭の中で昨日の出来事がフラッシュバックした。沖田が自分の所属する隊長の事を言っているのが分かり目を見開く。
「…」
「後、マヨ副長には最強のストーカーがついてる」
沖田がそこまで言うと友田は溜め息を吐き頭をボリボリと掻く。
「運が無かったって事ですかね」
「チビと地味を甘く見たって事かねィ」
二人はお互いを無表情で見据える。
「見逃せとは言いませんよ。潔くやりましょう」
友田はそう言うと抜刀した。沖田は目の前の男が構えた姿を見るとフッと笑う。
「さすが。俺が気に入った男でさァ」
「あ、ちょっとだけお願いが」
友田は刀を青眼に構えたまま何か思い出したように口を開けた。
「え?…あぁ、落とし穴ならちゃんと完成させますぜィ?」
刀の柄に手をかけたまま目を丸くする。
「いやぁ…ね。嫁の事なんですけど…アイツ、俺が真選組に入った事を喜んでましてね。攘夷に加担している事なんて知らないんですよ」
「あらら…」
友田は困ったような顔をして溜め息を吐いた。
「マスコミは挙って攘夷浪士を悪者扱いやないですか。攘夷だって立派な志だと思うのですがね。宇宙からの有害物質を持ち込む天人共を追い出して元の綺麗な江戸に戻そうとする行為のどこが悪いのでしょうか」
「…立派なエコ活動で」
「でしょ?」
沖田は一呼吸し抜刀して横一文字に構えた。
「でも俺、ゴミの分別ちゃんとしてっから」
「…嫁には賊にやられたって事で」
「おぉ」
友田は間合いをはかるようにジリジリと動く。
「最後に一つ質問して良いかィ?」
「何ですか?」
「何でこの仕事を引き受けたんでィ?」
待っている人が居るというのに。
「…義をみてせざるは勇なきなり」
「とことん似てまさァ…」
そう呟くと沖田は溜め息を吐いた。
「勿体ないなぁ…」
「お互い様」
友田が地を蹴り駆け出す。沖田の横に回り脇腹に向かって雄叫びを上げ刀を振り上げようとしたところを狙い沖田は一歩踏み出すと一気に刀を横に薙ぎ払った。
沖田の白刃は友田の首に食い込み皮一枚を残し止まった。
体と首が離れ血が噴水のように噴き出す。
友田の体が地面に倒れるとゴロリと頭が転がった。
「…」
沖田は薙ぎ払った構えのまま無言でそれを見る。体勢を戻し刀身についた血を振り落とした。
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