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終わっても素直に喜べない。助けようとした親子が死んでしまったのだ。喜べる筈がない。
そんな沖田を察したのか近藤が手を置いていた亜麻色頭を豪快に撫でる。
「よく頑張ったな」
「でも俺…」
沖田は俯いたまま呟く。土方もそんな沖田を黙って見つめていたが、ふと顔を上げある光景に目が止まり驚愕する。
「おい…総悟!」
土方が沖田の肩を叩く。
「え」
顔を上げ土方を見る。見開いた目線の先には、短髪の男性と茶髪の少女が立っていた。
「…え?」
全員驚いた顔でその二人を見る。
二人も信じられないと言った顔でお互いを見つめ合っていた。
「…生き返ったというのか?」
連日非現実な事が起きている中、最後のとどめは死者の生き返りかよ、沖田は唖然とする。
「皐」
短髪の男性が口を開いた。
「これ…すっかり遅くなってしまったな。クリスマスプレゼントだよ」
そう言いポケットから銀色のネックレスを取り出し皐の首にかける。
ネックレスのトップには羽根の生えたクマがピンクのハートを持っていた。
皐は微笑み、男性を見つ目返す。
「…何で私の好み知ってんの?」
「母さんから聞いたんだよ」
「ふーん…よく分かってんじゃん」
皐の目から涙がこぼれ落ちる。
父親はそんな娘を優しく抱きしめた。
「皐、愛してるよ」
――君を大切に思っている人が君のサンタだ
「ありがとう」
皐は腕の中でそう呟いた。
呆然と見ていた沖田は頭の後ろを突如バシッと叩かれる。ムッとして振り返ると微笑む土方の姿があった。
何か言ってやろうかと口を開いた瞬間、体に浮遊感を感じる。
「…わ!」
両手にあった刀と銃が落ち、目線が高くなる。下に目をやると黒髪の頭があった。
「え?!ちょ…近藤さん?!」
「総悟をこうやって肩車するのも久しぶりだなぁ!」
沖田の足を持ちぐるぐると回る。
「わわ!落ちる!…ちょ、土方、髪貸せ」
「痛っ!!ひっぱるな!バカ!禿げるだろ!」
「むしろ禿げろ、ハゲ土方」
「ハゲとらんわァァ!!!」
腕を組みそんな光景を見ていた原田が自分を見てくる山崎に気づく。
「何でこっち見るんだよ。俺は剃ってるだけだって」
「クリスマスプレゼントはカツラが良い?」
「…だ、か、ら!剃ってるだけだっつーの!」
銀時は両手を上げ背伸びをする。
「あ、いたたた……ったく、もう二度とアイツの依頼は聞かねぇ。どんだけ金つまれようと聞かねぇ……たぶん…うん、たぶん……いや、まぁ…でも人間絶対なんてないしね……わぁ!!」
「銀ちゃーん!私も肩車してほしいアル!!」
「ちょっ!神楽ちゃん?!一応銀さんこれでも負傷しているんだよ?!」
突然神楽に肩へ飛びつかれぐらりとよろめく。
周りはキラキラ光る雪が舞い落ちる。
新八は微笑み懐から小さなサンタを取り出すと高く天にかざした。
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