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「わ、わ、わ…」
山崎は人形が繰り出す突きを避けながら、苦無を投げる。腕に刺さり動きが鈍ると手にしていた刀で車切りをかける。
胴から砂が飛散し人形が土の固まりに変わった。
「フー」と安堵の溜め息を吐いていると突如背後から刀を頭の上で構えた人形が現れた。
「!」
吃驚して振り返ると人形の背後で砂が飛び散り土の固まりとなった。人形が消えた事で刀を持ったハゲ頭の呆れた顔が見えてくる。
「油断大敵」
「ご、ごめん。原田」
いつも逃げる事を最優先にしている自分はやっぱり戦闘向きではないな、と改めて思った。
「とりゃあァァ!!」
銀時が飛び人形の頭を叩き割る。頭が潰れそこから土へと還っていく。
「もろいなぁ。つかさぁ多串君。野次馬全然見ないけど…俺達本当に別世界に来ちゃったってわけ?」
「アホか。俺んとこの隊員共がここら一体を立ち入り禁止にしている」
「五十嵐家を封鎖せよ!ってか」
離れた所では二番隊と三番隊がテープを張ってえいりあんが暴れているから、と言い立ち入り禁止にしている。
「私がいないうちに終わらせようなんて百万年早いネ!」
人形達に向かって乱射する神楽。砂を飛び散らせながら次々と土に変わっていく。
「ちょ…!ちょっと!神楽ちゃん!!危ないって!」
新八も参戦し人形の刀というより神楽の銃弾を避けながら叫ぶ。
沖田はよろめく陽紀を見据える。緑の刀は地面に刺さったまま。やるなら今しかない。
左肩を引き、右足を前に出し半身に構える。刀身を右に寝かせ刃を内側にした。
「トシ」
その構えを取った沖田を見て近藤は土方を呼んだ。
「あ?…あぁ、決める気か」
土方も沖田を見る。
沖田は一気に踏み込んで捻るように左へ剣尖を持っていった。白刃が一閃し陽紀の首が飛ぶ。
その刹那、頭が無くなった陽紀の体から黒い煙が立ち上る。
「総悟」
肩で息をしている沖田に土方が寄ってくる。そして懐から銃を取り出すと沖田に渡した。
「?」
「例の赤い石が入っている」
「は?」
銃の弾倉を見てみると確かに赤い物が入っている。朝見た時はそこらに転がっている石のような形をしていたのだが。
「まさか…形変えたんですかィ?」
「何か文句でも?」
「無理矢理過ぎまさァ」
上空で黒い煙は一つになり緑の石となる。
「弾は一発だけだ。外すなよ」
「ソウゴ13を舐めてもらっちゃあ困りまさァ」
沖田は緑の石に狙いを定めた。そして引き金を引く。
――パン!
見事緑の石に命中。その刹那、眩い光が辺りを照らした。
「!!」
目を腕で覆う。ゆっくりと目を開けると無数のキラキラしたものが宙を舞っていた。
「綺麗アルー!雪みたいネ!」
神楽は広げられた傘と一緒に手を広げくるくると回る。
周りの人形は消え、陽紀の体も消えた。
山崎と原田は目を丸くして辺りを見回し、銀時は木刀をしまい肩を鳴らす。
新八は手を前にかざしキラキラした物を取ろうとしたが空を掴むだけだった。
「ここら一体がイルミネーションのようだなぁ!総悟!お妙さんにも見せてあげたいよ」
近藤は亜麻色頭の上にポンと手を置き上を見上げる。
「…」
土方は無言で煙草に火をつける。
――あぁ、終わったのか。
沖田は両手に刀と銃を持ったまま空を見上げた。
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