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白刃を避けて横に飛び着地した陽紀に近藤は腰を落として足払いをかける。
陽紀はそれを高く飛び避ける。宙返りをすると両手にある刃を交差させ近藤に襲いかかった。
危ない、と沖田は落とした刀を手に取ったその刹那、
――パン!パン!
乾いた銃声と共に陽紀の左腕に銃弾が当たり左手から刀が消える。近藤が後ろへ飛び、刀を振ることを止めた陽紀が着地した。
「大丈夫ですか?!」
黒髪の青年が駆け寄ってきた。
「山崎ィ…遅ぇよ」
「す、すみません」
山崎は横目で睨んでくる沖田に怯えながら後退りする。
「…で、持ってきたのか?」
「えぇ…まぁ…形は違えど…」
言葉を濁らす山崎に沖田は怪訝な顔をする。そこへ煙草を加えた男が銃を持ってやってきた。その男を見上げる。
「いつの間にスナイパーに転職したんでィ」
「サンタからのプレゼントだ」
「…土方さん、意外に少年の心を持ってるんですねィ」
陽紀は両手で緑の刀を持ち地面に突き刺した。四方八方に亀裂が入りそこから複数の刀を持った人形が生まれる。
「うわぁ…また増えやがった…」
銀時は嫌そうな顔をして木刀を肩に担ぐ。
「こんなの片っ端から叩っ斬りゃあ良いんだろ?」
土方は紫煙を吐き、煙草を捨て足でそれを潰す。沖田は立ち上がり刀を構えた。
「じゃあ土方さん頼みまさァ」
「あぁ?!」
「俺はアイツをやりやす」
そう言い陽紀を見据える。
「あぁ…そういう事か」と土方が呟いた刹那、陽紀が地を蹴り沖田に向かって走り出す。左腕が先程の銃弾によって垂れ下がったままだ。これなら一人でも勝てるかもしれない。
沖田も一歩前へ出、陽紀の刀を受け止めた。
周りの人形達も動き出す。
「さぁて、入院生活で鈍った体を動かすか!」
「無茶はしないで下さいよ」
近藤と山崎も刀を構え人形達を見据える。
「多串君が一人でやってくれるんじゃないのぉ?」
「殺すぞ、銀髪」
耳をほじりながら面倒臭そうに言う銀時に青筋を立てて銃を懐にしまい抜刀する。
沖田は身を低くし左手を地面につける。地を蹴り勢いをつけて陽紀の脇腹に蹴りを食らわした。
陽紀の体は横に吹っ飛ぶが咄嗟に地面に刀を深く突き刺す。そのまま柄の頭に右手を置き刀身に両足を乗せ膝を曲げた。それをバネのようにして蹴り沖田に体当たりを食らわす。
「っ?!」
陽紀は仰向けに倒れた沖田の上に乗り右手一本で首を絞める。
「んぐぐ…!!」
沖田は両手で自分の首を絞める手を引き離そうとした。相手は片手だというのに中々外れそうではない。
ヤバいかな、と思った瞬間、絞める力が弱まり陽紀の体が横へ吹っ飛んだ。
「…ゲホッ!」
体を起こし咳こみながら前方を見ると桃色頭が傘を肩に担いで自分を見下ろしていた。そして桃色自身の首の痣を指差し、
「借りは返したアル」
と言いフンと鼻で笑う。
「…見下ろすんじゃねーよ。クソチャイナ」
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