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陽紀が右手を天にかざす。緑色の刀のような物が表れた。
「これは…緑の石に感謝しなきゃねェ…遠慮なくえいりあんに取り憑かれた江戸に害を成す者としてぶち殺せまさァ」
沖田はニヤリと笑い陽紀を見据え刀を構える。銀時も肩を鳴らし木刀を構えた。
「…その緑のやつ。何かの映画で見たことあるなぁ」
「映画ネタ多いですねィ」
土煙を上げ陽紀が刀の剣尖を下に向け走る。沖田の一歩手前まで来ると一気上まで振り上げた。
ブワッと土煙が舞い小石や砂と共に強い風圧が沖田を襲う。
「!!」
近くに居た銀時の所にも風圧がきた。沖田は腰に重点をおき足に力を入れ風圧に耐え刀を持たない腕を顔の前に持って行き目を庇う。刀を横に構えた陽紀が風圧の勢いを借り猛烈な突きを沖田の胸に向かって繰り出してきた。
もろに防げば刀が折れそのまま突き刺さる。瞬時にそう判断した沖田は矛先をずらそうと刀を下から思い切り振り上げ弾いた。金属音と刃こぼれの青い稲妻のようなものが走り陽紀の刀は若干上へとずれる。後ろへ仰け反った沖田の左胸から肩を削ぎ血飛沫が一直線に上がった。
追撃を許すまいと銀時が駆け寄り木刀の峰を頭の後ろまで持っていき陽紀の頭を叩き割ろうとする。
「なっ?!」
左手にも緑色の刀を出しそれを逆手で受け止めると腰を捻り体を軸にして右手の刀を左斜めへとまわし銀時を襲う。
左手の刀は足を狙おうとした沖田の刀を止めていた。
陽紀の刀を受ける銀時の木刀の音と沖田の刀を受ける陽紀の刀の音が同時に鳴り響く。
「隙なしかよ!」
銀時はそう叫び後ろへ飛ぶ。沖田も間合いを空けた。
「僕も何かしないと…」
凄まじい戦いから少し離れた所に新八はいた。傍には息絶えた皐とその父親。せめて安全な所に避難させてあげたい。
とりあえず軽そうな皐から運ぼうかと体に触れる。
「…冷たいなぁ…」
全機能が停止した皐の体はもうすっかり冷たくなっていた。周りの気温も低いからか冷たくなるのが早いのか。
袖で涙を拭ってやる。眠ってるように見えるのだが、本当に死んでいるのだろうか。
「新八君」
後ろから声を掛けられハッと顔を上げる。
振り返るとそこには数日前の命の恩人が驚きの表情で立っていた。
「こ、近藤さん…」
「新八君…その子は……それに五十嵐さん……まさか…」
近藤の言葉に胸がつまる。新八はここまでの経緯を簡単に話し始めた。
「二刀流って何だか格好いいなァ!」
そう言いながら陽紀の右の刀を銀時は木刀で弾き先端を頭上まで上げ振り下ろす、それを左で受けられると空いた腹に蹴りを食らわした。
「旦那、ナイス」
体勢が崩れた所をすかさず沖田が下から逆袈裟をかけた。沖田の剣尖が陽紀の右の腰から背中の真ん中ぐらいまでをえぐる。
結構手応えがあった。血が飛び散る。
だが、陽紀は怯まず沖田の方をくるりと向き直ると右を頭上に左を前に構え一気に攻撃を仕掛けてきた。
「チッ!」と沖田は舌打ちをする。陽紀の左の突きを防ぐと上から緑の刃が降ってくる。それを弾くとまた突きがくる。
沖田は身を低くして避けると下から突きを繰り出した。咄嗟に陽紀は後方へ飛び剣尖が喉に届く前に刀を交差させ沖田の刀を受け止める。そのまま上へ押し上げ手元を蹴った。
「っ!!」
手元から刀が落ちる。しまった、と思ったが瞬間、陽紀の緑の刃が沖田を襲う。
「沖田君!!」
「総悟!!」
銀時は駆け寄ろうとした時、自分とは違う叫び声が同時に聞こえ「え?」と目を見開いた。
その声の主は鍔で陽紀の刀の切っ先を受け止め、弾き返すと気合いと共に上段から振り落とす。
「ゴリラ!!」
「近藤さん!」
沖田も目の前に表れた大柄な人物に驚き声を上げた。
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