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皐の父親が息を切らしながら近づいてきた。
「親父さん?」
「えぇ」
沖田は銀時の問いに答える。
「皐…お父さんが全部悪いんだ…。お前は悪くない」
新八は人形を手にしていた腕を降ろし父親を見た。皐は父親をジッと見据えている。
「俺が…俺があの時…酒のせいとはいえ、あの女と…」
――その刹那、上空にあった黒い煙が皐の体に入る。
「しまった!!」
沖田が皐とその父親に駆け寄る。
煙が入った途端、皐の目が赤く光り緑の石を持つ左手を父親の腹へ突き刺した。
「!!」
沖田の目が見開き足が止まる。
父親の背中から緑色の棒状の物が飛び出している。瞳孔が開いて口からは大量の血を吐く。
「…そ、そんな…」
目の前の惨状に新八は体を振るわせ首を横に振る。
しかし父親は微笑みそのまま皐をそっと抱きしめた。
「良いんだ、皐。寂しい思いをさせてすまなかった。苦しかったんだろう?全部お父さんが悪かったんだ。恨まれて当然だ。なぁ?皐…お父さん…は…」
そこまで言うとずるりと身を滑らせ地に倒れた。地面に赤い水たまりができる。
「う…う…うわぁぁぁあぁぁ!!!!」
皐が赤い目から涙を流し頭を抱えうずくまる。
三人は呆然と立ちすくみその惨状を見ていた。
――結局救えなかったのか?
沖田の脳裏に後悔の念が過ぎる。
「あ…あ…あぁぁ…」
皐から黒い煙が出、父親に刺さっていた緑の棒状の物が石に戻り宙を浮く。
皐の姿が普通に戻りパタリと倒れた。
咄嗟に新八がしゃがみ込み皐の脈をとる。
上空では黒い煙と石が重なり禍々しい光を放っていた。
脈をとっていた新八の目から涙がこぼれ首を激しく横に振る。
「フン、終わっちゃったわね」
突如、女性の声が聞こえた。沖田と銀時が同時に声がした方へ向く。
「ま、これだけデータが取れればパパも喜ぶでしょ」
金髪の女性が腕を組み石を見上げる。
「陽紀…!!」
沖田が女性を睨む。
「あら?あの親子を救えなかった事を私のせいにしてもらっちゃあ困るわ。坊や」
口に手を当てフフフと笑う。沖田はギリリと歯を食いしばる。
「まぁ、怖い…というか貴方達捜査中止って言われてなかったかしら?ま、良いわ。早くパパの所に行って報告しなくちゃ。これでやっとお金振り込んでもらえるわー」
陽紀は沖田達に背を向けて去ろうとする。
「待ちやがれ!!このアマァァァ!!!!」
沖田は抜刀し鞘を投げ捨て陽紀に向かって走り出す。
――その刹那、
上空で何かが沖田より早く陽紀に向かう。
「!!」
それは陽紀の頭上に向かって稲妻のように落ち、体が黒い煙で覆われた。
沖田の足が止まる。
――あの緑の石か
そう思ったのと同時にあの低い声が聞こえてくる。
『オワリ?マダマダアソビタラナイヨ』
陽紀の体が灰色に変わり目が赤く光る。金髪が黒髪に変わっていった。
『サァ、アソボウカ』
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