家族

46

皐の父親が息を切らしながら近づいてきた。

「親父さん?」
「えぇ」

沖田は銀時の問いに答える。


「皐…お父さんが全部悪いんだ…。お前は悪くない」

新八は人形を手にしていた腕を降ろし父親を見た。皐は父親をジッと見据えている。

「俺が…俺があの時…酒のせいとはいえ、あの女と…」




――その刹那、上空にあった黒い煙が皐の体に入る。



「しまった!!」

沖田が皐とその父親に駆け寄る。



煙が入った途端、皐の目が赤く光り緑の石を持つ左手を父親の腹へ突き刺した。



「!!」


沖田の目が見開き足が止まる。



父親の背中から緑色の棒状の物が飛び出している。瞳孔が開いて口からは大量の血を吐く。



「…そ、そんな…」

目の前の惨状に新八は体を振るわせ首を横に振る。


しかし父親は微笑みそのまま皐をそっと抱きしめた。


「良いんだ、皐。寂しい思いをさせてすまなかった。苦しかったんだろう?全部お父さんが悪かったんだ。恨まれて当然だ。なぁ?皐…お父さん…は…」


そこまで言うとずるりと身を滑らせ地に倒れた。地面に赤い水たまりができる。



「う…う…うわぁぁぁあぁぁ!!!!」

皐が赤い目から涙を流し頭を抱えうずくまる。



三人は呆然と立ちすくみその惨状を見ていた。



――結局救えなかったのか?

沖田の脳裏に後悔の念が過ぎる。




「あ…あ…あぁぁ…」

皐から黒い煙が出、父親に刺さっていた緑の棒状の物が石に戻り宙を浮く。

皐の姿が普通に戻りパタリと倒れた。


咄嗟に新八がしゃがみ込み皐の脈をとる。


上空では黒い煙と石が重なり禍々しい光を放っていた。


脈をとっていた新八の目から涙がこぼれ首を激しく横に振る。




「フン、終わっちゃったわね」

突如、女性の声が聞こえた。沖田と銀時が同時に声がした方へ向く。


「ま、これだけデータが取れればパパも喜ぶでしょ」

金髪の女性が腕を組み石を見上げる。


「陽紀…!!」

沖田が女性を睨む。

「あら?あの親子を救えなかった事を私のせいにしてもらっちゃあ困るわ。坊や」

口に手を当てフフフと笑う。沖田はギリリと歯を食いしばる。

「まぁ、怖い…というか貴方達捜査中止って言われてなかったかしら?ま、良いわ。早くパパの所に行って報告しなくちゃ。これでやっとお金振り込んでもらえるわー」

陽紀は沖田達に背を向けて去ろうとする。


「待ちやがれ!!このアマァァァ!!!!」


沖田は抜刀し鞘を投げ捨て陽紀に向かって走り出す。




――その刹那、




上空で何かが沖田より早く陽紀に向かう。


「!!」


それは陽紀の頭上に向かって稲妻のように落ち、体が黒い煙で覆われた。


沖田の足が止まる。



――あの緑の石か



そう思ったのと同時にあの低い声が聞こえてくる。



『オワリ?マダマダアソビタラナイヨ』



陽紀の体が灰色に変わり目が赤く光る。金髪が黒髪に変わっていった。




『サァ、アソボウカ』





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