家族

44

「…沖田君。そちらの地味な子もこんな感じだったの?」
「…えぇ。まさにそんな感じでさァ」

まさかこうくるとは思わなかった銀時と沖田は焦燥する。

さらに倒れていた皐が起き上がってきた。その左手にはまだ緑の石が握られている。

皐が飛び新八が木刀を構え地を蹴った。


――力が分裂したというのか?

「こいつは地味な奴が好きなんですかねィ」

沖田は刀を鞘ごと手に取り爪を防ぐ。その後ろで銀時が新八の木刀を弾く。
その途端に「ん?」と顔を歪ました。

「…あれ…?新八はこんなに力あったっけな?」
「旦那ァ。気を付けてくだせェ。今の新八君はスーパー新八3でさァ」
「え…えぇぇ!!うそォォ??!!」

新八が木刀を右斜めに構えた。来るか、と銀時は咄嗟に受け流す構えを取る――が、新八は木刀を振り下ろさず素早く前を横切り左の脇腹を狙う。

「なっ!」

フェイントかよ、と思った瞬間左の胴に強烈な痛みが走った。

「いっ!!」

横へ吹っ飛び地面を滑る。新八は飛ぶように走り追い打ちをかけようと木刀を振り下ろす。

銀時は仰向けのまま木刀の両端を持ち横に構え受け止めた。

「すまん!新八!!」

そう言うと新八の腹を足で蹴り後ろへ遠ざける。

「痛たた…もろにきた…。何?いつもこき使ってたのがダメだった?いや、もう謝るからさ。銀さん心入れ変えて毎朝6時起きでランニングするから」

顔を歪ませながら左の脇腹を押さえ立ち上がる。
そこへ沖田が何かを防いだ後なのか鞘に入った刀を縦に持ち身を低くしたまま後ろ向きに滑り込んできた。土煙が舞う。

「…ね?」
「…おぉ」

前を向いたまま短く呟く程度で聞いた沖田に銀時は短く返事をする。

化け物並に力がついた新八と化け物並の皐に挟まれた。


「四面楚歌ってやつ?」
「傷つけないっつーのは難しいでさァ」

新八はもちろんの事、皐にも手が出せない。いくら姿が変わってもあれは助けなければいけない娘なのだ。

銀時と沖田、背中合わせになり武器を構える。



――プルルル



突如沖田の携帯の着信音が鳴った。

「誰ですか?戦闘中は携帯の電源切っておくようにって先生から言われませんでしたか?」
「もしもし」
「出るんかァァいッ!!!」

普通に電話を出た沖田に銀時は思わず後ろを向いて突っ込む。

電話の相手は山崎。先程、沖田からの着信があった事に気付き掛けてきたのだろう。その電話相手に向かって早口で言う。

「三秒以内に例の奴持って五十嵐」

そこまで言うと前方から皐の爪が襲いかかる。後方では新八が木刀で突きを繰り出す。

二人は素早く横に飛んで避ける。
携帯電話が落ちそこへ皐の爪が刺さった。

「例の奴って何?!」
「ひかりの玉的な奴でさァ!」

地面を滑るように着地、変わってしまった二人を見据える。

「あ、三秒たった。山崎のミントンの羽根全部隠す」
「ガキのいじめか!」

皐が宙を飛んだ。その刹那、何かが転げ落ちる。

しかし、沖田達はそんな事気にする余裕はなく二人は左右に分かれ飛ぶ。
皐は上からの鋭い爪の突きを外したのと同時に沖田に向かって足払いをする。避けた直後に下を狙われ体制を崩す沖田に向かって右爪を高く上げそのまま振り下ろす。咄嗟に刀の鍔を使いしのいだが、腹に蹴りを食らい新八の所まで吹っ飛んだ。

「沖田君!」

銀時が叫ぶ。新八からの追撃がくるのかと思いきや何かを見つめたまま動かなかった。

「?」

皐が先程落とした物――



小さなサンタの人形を見ていた。





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