家族

42

カチン、と音を鳴らし刀を鞘に納める。

「やっぱこっちの方が良いねィ」

道端に転がっている攘夷浪士達を見て沖田は呟いた。

連日変な物ばかり相手をしていたが、今日は久しぶりの人相手。刀にも優しくあっという間に片付いた。

パシリという名のパシリ山崎を呼び出そうと携帯電話を取り出す。


「…」


呼び出し音がかかるが中々出ない。


あのヤロー…俺からの電話は三コール以内に出ろとあれ程言っているのに…


帰ったらミントンラケット真っ二つの刑決定、と…仕方なく電話を切る。


「おぉ!隊長!!!さすがっスね!!もう取り締まったんスか??!!しかも今回は全員生存しているではないですか?!」

ぐるぐる眼鏡をかけた男性が近づいてきた。沖田は明らかに鬱陶しそうに目を細め見る。

「いいから早く縛れ」
「えっ??!!じ、自分はてっきり隊長はドSかと思っていたのですが…実はドMだったのですか??!!いいっスね!!それでも全然いいっス!!では遠慮な」
「なぁ…神山。この状況を見て何でそうなんの?」

縄を取り出しなぜか頬を赤らめ迫ってくる神山の額を柄の頭で押さえつけながら溜め息を吐く。

「隊長ーどこ…あ、いた。あっちも終わりましたよ」

別の隊士が沖田達の方にやってきて向こうの方を指差す。

「あぁ…ご苦労さん。山崎のバカが電話に出やがらないからこいつら縛ってパトカーに詰め込んで。ついでにコイツも」

ドカッと神山をひと蹴りした。
「お前も懲りないねー」と、隊士は自分の傍まで吹っ飛んできた神山に言う。

沖田はふと顔を上げる。見知った銀髪がこちらに向かって手を振っていた。

「屯所まで連行頼んまさァ」
「はい!」
「イエッサー!!」

神山達に指示を与え銀髪の方へ近づいた。



「旦那」
「沖田君ってドMだったんだ。銀さん知らなかったよ」
「そら知らないでしょう。俺も知りやせん」

ニヤニヤと笑う銀時に無表情で沖田は答える。

「今から五十嵐さんの家に行こうかと思うのですが、一緒に行きませんか?」
「お!見回りのサボりを手伝ってくれるんですかィ?新八君」
「えー?!」

新八の顔がひきつる。そうだ、この人は一応勤務中なんだ。いつもそんな素振りを見せないので頭の中から抜け落ちていた。

「そうそう。優しいでしょ?行くっしょ?沖田君」

そう言い銀時は沖田の肩を抱く。

「まるで遊びに行くような乗りですねィ。もち行きやすよ」

親指を立て銀時を見る。「よし、行くか」と五十嵐家に向かって歩き出した。


ふと沖田がキョロキョロと辺りを見渡す。

「似非異国天人不法入国怪力空洞娘は?」
「志村家。クリスマスケーキ作る修行だとよ。俺が作るって言ったのに、ケーキは女の子が作るもんアルーとか言っちゃって」

銀時は頭を掻き溜め息を吐く。隣で新八が「よく神楽ちゃんの事だって分かりましたね」と呟いた。

「あぁ…もうケーキは諦めた方がいいですねィ」
「だろ?!だから真選組にお邪魔して良い?どうせパァッとやるんでしょ?」

まだクリスマスらしい飾りも何もしていないが。

「今回世話になりやしたし言っておきまさァ」
「お!ラッキー!!言ってみるもんだねぇ。良かったな、新八。飯代浮いたぞ」
「…姉上了承してくれるかなぁ」

新八はまさか姉一人家に置いて行けるわけないので困った顔をする。そんな新八を見、銀時は「あ」と言うと沖田の方を向く。

「ゴリラ退院おめでとう」
「あぁ、ありがとうございやす。また姐さんの所に行って再入院しないようにしてもらわないと」

そんな沖田の言葉を聞きアハハと新八は苦笑した。





「あ、もう綺麗にしちゃったのね」

銀時達の目の前には五十嵐家の跡地がある。瓦礫は片付けられ更地になっていた。

「一応娘は行方不明になっていやすからね。捜索を込めて片付けやした」

もちろん見つけはできなかったが。

「何か瓦礫の中に手がかりがあるかなぁ…って思ってたんですが……あ!」

辺りを見渡していた新八は大木の傍で立っている少女に目が止まる。

「あの時の子だ」
「ん?」

銀時が新八を見る。

「一昨日神楽ちゃん探してた時に会った子ですよ」
「あぁ、イチャついてた?」
「…だから違いますって」

ガクっと肩を落とす新八。

「確かお母さんが亡くなったって言ってたけど…元気になったかな?」

新八が少女に近づこうと足を動かしたその時、後ろから沖田がその肩を掴み動きを止める。


「え?」
「新八君」

「何?」と言った感じで振り返った新八の肩に沖田は手を置いたまま少女を見据えていた。



「五十嵐皐だ」
「…え?」

目を丸くし沖田を見る。銀時も吃驚した顔で沖田を見た。





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