家族

39

斉藤と別れた後、山崎は隠し部屋を探して棚を退けると一部床の材質が他と変わっていることに気付く。案の定その部分は外れその中には階段があった。下へ降りて行くと気味の悪いえいりあんのホルマリン漬けや剥製が見えてくる。遠くの方で刀が何かにぶつかる金属音が聞こえもしやと思い走ってきた。




「…と、藤堂さんっ??!!」

山崎は藤堂の意識が無くなったのを見、慌て叫ぶ。
藤堂の口に手の平をかざす。息はしていたが出血がひどい。とりあえず傷口を上着で押さえるが一刻も早く病院に連れて行かなくては。


懐にあるジャスタウェイ人形で斉藤に信号を送る。送りながらも敵地ど真ん中で助ける事ができるだろうか、と不安になるが首を横に振り消そうとした。

改めて周りを見ると所々コンクリートが割れ苦無が刺さったままの状態で先程の銅像が倒れている。藤堂が倒したであろうロボットが数体地面に転がっていた。
向こうの方には何かの機械だろうか、キーボードのようなものがあり上のガラスが割られ辺りにはガラスの破片が散らばっている。

そして何か伝えようとしていた藤堂の手元にある赤い石を見た。以前自分が持っていた嫌な思い出しかない緑の石と似ている。


しかしこれだけ暴れていてなぜ誰も来なかったのか。


「!」

人の気配がした。斉藤ではない。
警戒しつつ周りを見渡していた山崎はある一点に目を止め驚愕した。

老人が宙に浮いている。

その老人は山崎達を見、鼻で笑うと消えていった。


――幽霊?

目を見開いて唖然としていると向こうの方から「山崎!!」と、斉藤の呼ぶ声が聞こえハッと我に返る。


「斉藤さん!!」
「…凹助?!」

斉藤は血だらけで横たわっている藤堂を見、駆け寄り立て膝をついてそっと藤堂の体に触る。

「これは…すぐにでも病院へ連れて行かないと」

斉藤の後ろで別の声がした。山崎が見上げると短髪の男性が立っている。


「え?五十嵐さん?」

山崎は思いもよらない人物に目を丸くする。確かに斉藤が会うとは言っていたが。

「あちらにほんの一部しか知らない地上への抜け道がある。そちらへ」

何で五十嵐がその一部に入っているか気にはなったがそんな場合ではない。でもあの娘の父親だ、信じていいのだろうかと山崎は困惑した顔で斉藤を見る。

「大丈夫。行こう」

そんな山崎を察したのか斉藤はそう言い頷いた。






地上へ出ると五十嵐が「車を取ってくる」と言い走って行った。



「何で五十嵐さんが?」

斉藤と一緒に静かに藤堂を寝かせると山崎は怪訝な顔をして聞く。

「あの人が捜査中止を要求したのではなかったのですか?」
「いや…事は俺らが思っていた以上に複雑だったみたい」
「とは?」
「子を思う気持ちがもっと別の所で働いていたっていう事」
「えーと…」

たまに斉藤の言い回しがよく分からなくなる。

「本人から聞いてみると良いよ」

五十嵐の車だろうか、ヘッドランプの光が近づいてきた。





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