家族

38

「あー…いてぇ…」

バンダナを赤く染め呟く。藤堂は刀を杖代わりにし、立ち上がった。

そこへ長身の人型ロボットが機械音を出しながら近づいてくる。


もう潜入捜査なんて絶対やらね。


そう心に誓うもまず生きて出れなきゃやる機会も出てこねぇよな、と藤堂は自嘲した。

刀を構えた。何体目かのロボットに向かって走り出す。

ロボットの目が光り機械音と共に腕が伸びる。それを避けると伸びたバネに向かって下から斬り上げた。見事腕が取れる…が、もう片方の腕が伸びロボットの拳が藤堂を襲う。

咄嗟に腕を立てて防いだ。何かが折れる音と共に苦痛で顔が歪み歯を食いしばる。

「…ってぇなぁこらァ!!!」

吼える声と同時に刀を下から逆袈裟に斬った。
ロボットは斬られた所からバチバチと放電し倒れる。

肩を揺らしながら荒い息をし、だらんと垂れている自分の左腕を見る。…完璧折れたな。

ロボットというのは痛覚がないから厄介だ。もう出てこないだろうな、と思ったその刹那、後ろから何かが動く気配がした。

素早く振り返ると今まで動かなかった銅像が手にしていた槍で突きを食らわそうとしている。

「もういいだろ!!!」

藤堂は思わず叫びながら横に避ける。
その刹那――


「!」


赤色の石が藤堂の服の中から落ちた。コン、コン、と割れたコンクリートの隙間に向かって転がっていく。

「あ!」

声を上げ刀を放りだし赤い石に向かって走り出す。地を蹴り飛びついた。
間一髪落ちる前に石を掴む。そのままごろりと横に一回転をした。

壁にぶつかり止まる。起き上がろうとした瞬間、背中を強く押されたような衝撃がきた。胸の奥から何かがこみ上げてくる。

「…ガハッ!」

赤い液体を吐いた。自分の腹を見てみると鉄の固まりが有り得ない場所から飛び出しそこから赤い液体がポタポタと滴り落ちている。


――あぁ、刺されたのか


ズボッと鉄の固まりが抜かれると体が一瞬跳びはねる。

体の中心が熱い。痛みは感じないが力が入らない。


ヤバい気がする、やっぱり絶対100%もう潜入捜査なんてやらねーからな。あ、でも自分が立候補したんだっけ?自業自得かぁ…


せめてこれだけは…


手にした赤い石を霞んだ目で見つめる。




「藤堂さん!!!」



――おや?


聞こえる筈のない声が聞こえた。

銅像が倒れる音と共に誰かが近寄ってくる。


「藤堂さん!!」
「…や…ま…ざき…?」

地味な見知った顔がしゃがみ込んで顔を覗き込んできた。何で?と疑問に思ったが、まずこの事を伝えなければと藤堂は声を振り絞る。

「こ…れ…」
「えっ?!」

震えながらも手にしていた赤い石を半泣き状態の山崎に見せる。
藤堂の口が魚のように動くだけで声が出ていない。


…あぁ…これが何か話そうと思ったけど無理っぽいわ。


「死んじゃだめですよ!!」


誰が死ぬか、つか死の呪文がダメとか言うな。…何かもう矛盾しているし…



そこで藤堂の意識が落ちた。





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