家族

28

泥人形は手から刀のような物を作りだし襲いかかる。

この一週間で3回も人間以外の奴と戦うなんてそうないんじゃないのか。
沖田は泥人形が次々と繰り出す突きを避け地を蹴り右へ飛ぶ。着地と同時に腰を落としたまま抜刀、そのまま泥人形に向かって一太刀振るう。

「!」

地面から土の固まりが飛び出し泥人形を守るようにして沖田の一打を防いだ。土の固まりから泥人形の刀が突き出してきたが身をひらいてそれを避ける。

「ふぁちゃぁー!!!」

気合と共に神楽が飛び泥人形の頭上を目掛けて傘を振り下ろす。頭には当たらず地面にぶつかり地がへこむ。

「フン!!」

続けざまに身を低くしたまま傘を上へ振り上げ腰を狙うがまたしても避けられ空を切る。
瞬時に泥人形が刀を振り上げ身を低くしたままの神楽の頭を叩き割ろうとしたが咄嗟に沖田が懐に入り顔の前で鍔を使い刀を受け止めた。

「!」

相手の刀が金属ではなく土で出来ているせいか受け止めた瞬間細かい土が飛び散り沖田は顔をしかめ反射的に目を瞑る。
刀に入る力が緩み体勢が崩れる。その真横を傘が通り泥人形の顔に向かって無数の銃弾を浴びさした。

激しい銃声が辺りに響き渡り土をまき散らしながら後ろへ後ずさる泥人形。

「チッ!」

沖田は舌打ちをし、膝をついたまま目を擦り見上げる。

神楽は銃撃を止めると泥人形に向かって走り出し飛ぶ。

「その面消してやるネ!!」

そう叫ぶと白煙を出している顔に向かって蹴りを食らわした。
銃撃でボロボロになっていた顔が神楽の蹴りの衝撃に耐えきれず粉々になる。

やったか?と思った刹那、無くなった頭の代わりに首から手が出、神楽の細い首を掴んだ。

「!!…んぐっ!!」

ギリギリと締め付けられ神楽の顔は苦しげに脂汗が出、宙に浮く足が暴れる。

「チャイナ!!」

沖田は駆け出し神楽の首を締め付ける腕に向かって刀を下から上へと斬り上げた。

右肩の傷で力の調整がうまくいかずギィィーンという音と共に刀身が折れる。

チッ!と舌打ちをすると折れた刀を放り投げ後ろへ飛び泥人形に向かって体当たりをかます。ぐらりとよろめくと拳を握りしめ首に目掛けて殴りつけた。
衝撃で泥人形は神楽と共に仰向けに倒れる。その上に乗ると脇差を抜き首から出る腕を両断した。

神楽は自分の首を締める手が緩んだのを感じ引き離すと地面を転がって泥人形との距離をとる。

外れた腕は土となり地に戻っていった。

「…ゲホ!!…っ」

地面にうつ伏せのまま首に手をやり、やっと空いた気管に酸素を通そうとヒューヒュー音を鳴らしながら呼吸をする。
顔から脂汗が落ち、口からは涎が垂れ、地面を点々と濡らす。

涙目のまま泥人形の方を見ると沖田が脇差で泥人形の刀を防いでいる所だった。

沖田の方が押されているように見える。右肩一面赤く染まっていた。


――血?いつの間にかやられたのか、と思ったがまず助太刀に行かなくては、と地を蹴り落とした傘を手に取ると泥人形の背後から脇腹を思い切り強打した。
泥人形は横へ吹っ飛び地面を滑る。

「サド…お前怪我してるアル」
「だから休んで良い?」
「…そのまま永眠すればいいネ」

二人は荒い息を整えながらお互いを見据える。
泥人形はゆっくりと起き上がり沖田達へと向かってきた。

「…アイツ…顔ないのにどこから見てるネ?」
「…チャイナ」
「ん?」

こちらに来る泥人形の方を向いていた神楽が沖田を見る。

「思いっ切りアイツの体に向かって銃弾を打ち込め」
「…分かったアル」

また細かい傷をつけた後一気に砕く方法を取るのかと思い神楽は返事をすると銃口を泥人形に向ける。

泥人形が撃たれるものかと言わんばかりに飛んだ。

本当にどこに目があるんだと思いながらも狙いを定めながら乱射をする。銃声と外灯が割れる音を辺りに響き渡せながら泥人形を追うが中々集中砲火ができない。

「俺の方へおびき寄せろィ」

そう神楽に言うと沖田は倉庫の隣に停めてあった陽紀達の白い車の上に乗る。
神楽は泥人形をそこへ向かうように銃弾で追う。


泥人形が近づくと沖田は車から飛び降りた。

泥人形が車の上に乗る。


車に何発も銃弾が当たったその瞬間――




ドカーーン!!!



車が爆発し炎上、泥人形の動きが止まった。



「今だ!!」

沖田が叫ぶ。


神楽が動きの止まった泥人形に無数の銃弾を浴びせる。

炎の中から神楽に向かって飛び出したところを沖田が脇差で一刀一閃した。


体が真っ二つに割れる。

「!」

何かが割れた体の中で光った。
沖田はそれを掴み取る。


「アチッ!」

掴み取った物をお手玉のように左右の手を行ったり来たりさせながら神楽の元に近寄った。


「終わったアルカ?」

フーと息を吐き傘を降ろす。二つに分かれた泥人形は地に落ちただの泥となっていた。

「たぶん」

そう言い沖田は掴み取った物を神楽に放り投げる。

「ん?…わ!熱っ!!」

神楽は一度受け取ったがすぐ落とす。
落とした物を見てみると石像を倒した時に出てきた黒い玉と同じ物だった。





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