家族

27

数件の家が建っており外灯がポツポツとある。沖田も本庁の中へは何回か行った事はあるが、周りは歩いたことがない。


「ゴーレムはどこへ行ったネ」
「いい加減ゴーレムから離れろィ」

未だ石像に執心中の神楽に沖田は溜め息を吐く。

「私はゴーレムのなり方を教えてもらう為に来たネ。それから離れたらついてきた意味なくなるアル」

もう召喚の仕方からなり方になっているが面倒くさいので突っ込まない事にした。

大分時間が経ったので随分先まで行ってしまったか、辺りを見渡しても陽紀達が乗っていた白い車は停まっていない。

「見失ったねェ…」
「えーっ?!」

沖田がボソッと呟いた言葉に神楽は不機嫌丸出しの声を上げた。

「もう少し行ってみるアル」
「オイオイ…」

どんどん最初の検問所から離れて行く神楽に沖田は嫌な顔をする。
無理なら無理で早くこんなところから去りたいのだが…溜め息をつきとりあえず神楽の後を追った。

「あまり人いないアル。パピーの頭のような町ネ」
「何だそれ?」
「寂しいって事アル」

神楽の言う通り検問してた割には人気がなかった。

…何か重要な施設があるのか、と思うがはっきり言って事件以外の事を探るのは危険すぎる。そこまで無茶をするバカではない、沖田は神楽に戻ろうかと声をかけようとする。

「オイ」
「あ、あれじゃないアルカ?」

神楽が指を差す先には倉庫らしき建物の前に陽紀達が乗っていた白い車が停まっている。

「ほんとだねィ」
「行くアル」
「ちょっ…」

大した警戒もせずさっさと行ってしまう神楽に沖田は慌てながらもついて行く。

「おめぇなぁ…もうちっと慎重に行けよ。幕府の敷地内にはそこら辺赤外線センサーが張られまくってるって聞くぜィ」
「そんなの見えないもんは見えないアル。怖がってたって仕方ないネ」
「…」

コイツと入ったのは失敗だった、沖田は心底後悔した。

二人は倉庫に近づく。何か聞こえないかと聞き耳を立てるが遠くの方で機械音がなっているだけで何も聞こえなかった。
中を見ようとしても窓らしい窓がない。

出てくるのを待ってるか…もう戻るか…。どこかへ行ってしまった皐の行方も探さなくてはならないし。

沖田は色々考えた末、やっぱり戻るかと神楽の方を見るが…いない。

「…」

もう放って帰ろうか。頭はアホでも腕は良いから何かあっても大丈夫だろう。

溜め息を吐き来た道を戻ろうとした時、倉庫の表に桃色が目に入った。

出入口辺りをウロウロしている。ドアを触ったり叩いたりこじ開けようとしたりしていた。さすがの沖田もその行動には血の気が引く。


――帰ろう!


そう心に決め走ろうとしたその時、



ビー!ビー!ビー!



敷地内に警戒音が鳴り響いた。


「わぁ!!」
「わぁ、じゃねーよ!そりゃそうなるわ!」

沖田は吃驚している神楽の頭を叩く。

「中見ないと分からないアル!」
「アホか!無理なら無理でいいんでィ!諦める事も勇気でさァ!」
「意気地無し!」
「頭空洞女!」

「おや?可愛いお客さんじゃのぉ?」

ふとドアの方を見ると老人、陽紀の父がいた。

「男の方はどこかで見た事があるのぉ…ワシの知り合いだったかな?」
「そうネ。昨日ぱふぱふ部屋で一緒だった筈ネ」
「行かねーよ。そんなとこ」

神楽は冷めた目で自分を見る沖田を睨むと傘の銃口を亜麻色の髪に押し当て顔を近づける。

「つじつまを合わせようとしているアル!黙るヨロシ!」
「黙れるか。そもそもおめぇがこんな事態引き起こすからこうなったんだろ!」

小さな声で怒鳴り合う二人を見て老人はフォフォフォと笑う。

「面白い子供達じゃの。生憎ワシは昨日これを作っとったんじゃ」

そう言い液体が入った小瓶を二人に見せる。

「ワシは戦闘種族にも匹敵する人造人間を作るのが夢でな。これもそのひとつなんじゃ」

ニヤリと笑うと二人を見据えた。

「ひと月前には実体は無いが自分の意志で動く戦闘専門の物を作って石に閉じこめたんじゃが…あれは失敗じゃな。欲が出てきておる。純粋に主人の命令だけ聞く人造人間を作らなくては…」

あの緑の石の事か、と沖田は思う。

「色んなものに取り憑いて戦闘能力を極限まで上げるというのは良かったんじゃがなぁ…完璧に作るのは難しいのぉ。沖田総悟君」
「!!」

沖田の目が見開く。そんな沖田を見てまた老人は笑う。

「驚いたか?いつも元気な真選組一番隊隊長の名は幕府内でも結構有名じゃよ。人間のその若さでその優れた戦闘能力は目を見張るものじゃな。是非データを取らせてもらいたい。お隣の夜兎のお嬢さんも」

ニヤニヤと笑いながら身構える神楽を見ると老人は地面に小瓶に入った液体を垂らす。

ジュッと湯気を立て一瞬で蒸発するとそこから泥の固まりが生まれ段々人型へと変わっていった。

「次は泥人形ネ!」
「チャイナ…」

また目を輝かせている神楽を見て沖田は顔を歪ませ思わず呟く。

「良いデータを取らせておくれよ、子供達」

そう言うと老人は空を飛ぶ。



「アイツも召か」
「もういいって。いっその事ゲームの世界に旅立てよ」





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