25
「沖田君、親父さんて再婚したの?……って、あれ?」
沖田達が隠れている場所に戻ってきた銀時は亜麻色頭と桃色頭がいなくなっている事に気付く。
「さっきの女の人を追いかけて行っちゃいました…。なぜか神楽ちゃんまで」
「……あのクソガキども…」
アハハハ、と苦笑しながら頭を掻く新八の言葉に銀時は顔を歪め呟いた。
「何でおめぇまで来るんでィ」
「ゴーレムの召喚の仕方教えてもらうネ。私召喚士になるアル」
「まだ言ってたのかィ」
建物の陰には亜麻色と桃色が二つ。沖田と神楽は前にいる金髪の女性に目を向けていた。
金髪の女性は腕を組んで何やら考えている様子。そこへ耳が尖った老人が現れた。
「陽紀、調子はどうじゃ?」
陽紀と呼ばれた金髪の女性は顔を上げ老人を見る。
あぁ、確かに武田が調べた紙には「陽紀」と書いてあった。やはりあの天人か、と沖田は思う。しかし同時にある事に驚かされた。
「再婚したのか…」
「ん?何?」
呟いた沖田に神楽が反応する。「別に」と答えると「あ、そ」と再び目線を前に向けた。
「あの娘が余計な事をしたおかげで厄介になりそうだったけど、大丈夫そうよ」
そこまで言うと陽紀は溜め息を吐きさらに続けた。
「一度、真選組の手に渡った時はどうなるかと。何考えてるのかしらあの子は…」
「…儂が捜査中止するよう言ったからのぉ。もう平気じゃろ」
「ほんと、パパのおかげだわ。所詮あいつらは幕府の犬よ。上の命令に逆らう筈ないでしょうね。もし逆らう奴がいたら命知らずのバカよ」
「やーい、バーカバーカ」と指差して言ってきた神楽を沖田は睨む。
「…まだまだデータを取りたい。たまに奴らはやりすぎるところがあるからのぉ。…しかし…中々あの石は使えそうじゃの」
老人はフォフォフォと笑う。
「もうあの子ダメっぽいわよ。何あれ?」
「石が調子に乗って実体を求め主の体を乗っ取ろうとしとるんじゃろ。改良の余地がありそうじゃな…」
「フーン…。お金早く振り込んでよ。あの人にも飽きちゃった。身分も顔も良い男いないかしら…」
「妻を殺しておきながらそれはないじゃろぉ…フォフォ」
沖田の予想通り一年前、皐の母を殺したのは夫の浮気相手だった。
あの老人は陽紀の父か。武田の調べでは幕府の官僚と書いてあったが…研究所の人間?石とはあの緑色の石か。皐を実験台に?
「胸くそ悪ィ…」
思わず沖田は呟く。
今すぐ飛び出して斬ってやろうか、とも思うが相手は幕府の官僚、迂闊には出れない。
しかも先程の石像との戦闘でどうも右肩に違和感がある。数日前の化け猫で負った傷が開いたか。
「あ」
沖田は何か閃いた顔で声を上げ神楽を見る。
「おめぇ行ってこい」
「は?」
突然振られた神楽は素っ頓狂な声をあげた。
「真選組は確実な証拠がねぇ限り幕府の人間には手ぇ掛けれねぇ。というわけで殺してきて」
「アホか。そんなおつかいよろしくみたいなノリで言うナ…あ!」
神楽が指を差して声をあげる。陽紀と老人が白い車に乗ろうとしているところだった。
「げ!車か」
さすがに足で走行中の車を尾行するのはキツい。真選組手帳でも使ってそこらの車でも借りようかと沖田は辺りを見渡す。
「おい」
突如声を掛けられ沖田は振り返った。スモークを張った窓に黒塗りの車、サングラスを掛けたハゲ頭の男が窓から顔を出している。
――ヤクザ?
沖田が怪訝な顔で見ていると「俺だよ俺」と言いサングラスを取る。
「原田…!」
「お二人さんデート?」
「寝言は寝てから言うアル」
戻る