家族

22

「いいアルカ?お前達。今から私がリーダーネ?私の言う事を聞くアル」
「何言ってやがる。俺がボスでィ」
「フン!なら私が工場長アル!」
「じゃあ俺社長」
「班長アル!」
「組長!」
「首相ネ!」
「大統領でさァ」
「どーでも良いわァァ!!!!そんな事ォォ!!!!」

新八は何度目かの突っ込みを入れ「ハァ」と溜め息を吐く。

「コラッ!!メッ!!あのね、君達。仲良くしないともう連れて来ないよ?喧嘩ばかりする子はウチの子じゃありません」
「アンタは父親か」

あぁもう、あんた達はコントをしにきたのか、新八はガクッと肩を落とした。

「そう言えば沖田君、仕事は?」
「今日明日と非番でさァ。急に担当の事件がなくなりやしたからねィ…あ、着きやしたぜィ」

一年前とは変わらないどこにでもあるような二階建ての民家を見上げた。

「さ、行きやすぜィ」
「えっ!ちょっ…!!いきなり?!」

早速インターホンを鳴らそうとする沖田に銀時は焦る。

「待ってても仕方ありやせんぜィ」
「い、いや…心の準備が…いきなり化け物とか出てこない?」
「黒い煙には注意してくだせィ」

そう言いインターホンを押す。


――ピーンポーン


「…こういうのって隊服じゃなくても良いの?」

銀時は沖田の私服を見ながら聞く。

「着てたら真選組ってバレまさァ。中止命令反してやすからねィ」

「あぁ、そっかそっか」と銀時は呟く。

「……出てきませんね。留守かな」
「さては神楽様に恐れをなしたアルナ?」

新八は上を見上げ神楽は腕を組みフフーンと鼻を鳴らす。


休日だから学校はないだろうし…出かけているのか、と思い沖田が出直そうかと言い掛けたその時―――



――ガシャーン!!


「!!」


二階のガラスが割れ破片が飛び散る。

四人は顔を腕で庇い上を見上げた。破片が舞う中、人が飛び出し沖田達の後ろへ降り立つ。

そこには灰色の肌に目を充血させ涎を垂らし乱れた茶髪…



変わり果てた五十嵐皐だった。



「沖田君の嘘吐き!!!黒い煙なんて出てこないじゃん!!!いきなりボスじゃん!!!」
「…これは予想外でさァ」

叫ぶ銀時の隣で頭を掻く沖田。

「予想guy…って、どこかの携帯会社のCMですかコノヤロー」
「沖田さん…この子ってまさか…」

新八が変わり果てた皐を指差す。

「そのまさかでさァ」
「ごっさ顔色悪いネ。何食べたアルカ。病院行った方が良いアル」
「それ、本気で言ってるんならおめぇが病院行ってこい」

「!」

皐の手の中で何かが光る。

「あれは…」

例の緑色の石だ。
あの姿…皐は取り憑かれたわけじゃないのか?


『オキタソウゴ…』

「!」

皐の口からとても女の声とは思えない頭に響くような低い声色がでた。



『オキタソウゴ…コロス!』



――ドゴォ!!

皐は腰を落とし緑の石を持っている手を地面にぶつけると四方八方へひびが割れ石の固まりが出てきた。
そしてそれだけでも驚愕すべき事だったのだが、さらに固まりから頭が生え、手足が生え、目が出て口が出て、身の丈三メートルはあろうかと思われる石像になる。


――どこのRPG?


沖田達は信じられないと言った目で凝視している。

「す、凄いネ!!私、これ知ってるアル!!ゴーレムって言うネ!!」

目をキラキラと輝かせてはしゃぐ神楽。

「沖田君。君をご指名だよ。いってらっしゃーい」
「嫌だなぁ、旦那ァ。俺たち親友じゃないですかィ」

沖田は手を振り去ろうとする銀時の着物の裾を持って逃がすまいとしている。

「こんな動く石像とツルんでいる親友なんて絶交ですぅぅ!!!」
「アンタ達、どんな風に育ったらこの状況でそんな反応できるの?!ねぇ?!」


石像の後ろにいる皐はゆっくりと身を起こすとどこかへ飛んで行ってしまった。

「しかもあの子飛んだアル!召喚士ネ!私もゴーレムの召喚の仕方教えてもらうアル!」

神楽は相変わらずキラキラした目で皐が飛んでいった後を見て言う。


その刹那、石像がその巨体で宙を飛び拳を振り上げ四人に向かって突き降ろす。
神楽が避けるように飛び沖田と銀時はパニック状態でいる新八の両腕を掴んで飛んだ。

ドォーン!!という地面がへこむ激しい音と共に砂埃が舞い小石が飛ぶ。宙で神楽は沖田達の前で傘を開きそれらを防ぎながら地に降り立った。沖田と銀時も新八を後ろに放り投げ着地する。

「これ、倒したらどれだけ経験値もらえるネ?」

傘を閉じ銃口を石像に向ける神楽。

「レベルは上がるんじゃね?」

沖田が抜刀する。

「仲間呼ばねぇだろうなぁ…」

銀時も木刀を構えた。



「僕…出番ないよね。これ」

投げられ地面を滑り終えた新八は顔をひきつらせながらそんな三人の背中を見つめていた。





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