家族

21

「沖田君、俺さ、仮にも銀魂の主人公なのに20ページ以上かかってやっと登場ってどういう事?つかさ、何ページか前に銀さん登場フラグ立ってたよね?華麗にスルーしたよね?ね?いや、分かってるよ。ここは真選組中心だって。でもちょっとぐらい出てもさ」
「旦那」

沖田はポンと銀時の肩を叩く。

「気ぃ済みましたかィ?」
「あ、はい。すみません」








「依頼に来ました」と沖田が万事屋の戸を叩いたのは数十分前。こいつが依頼する内容はいつもとんでもない、嫌な予感がする銀時だったが、もらう金額的にはいつも申し分ない額なので一応聞くだけ聞いた。

…やっぱり今回もとんでもなかった。

「銀さん、受けましょうよ。体を張って助けてくれた近藤さんの為にも僕やりたいです」
「いや、でもなぁ…新八。お前の話も聞いたけど化け物だぜ?ありゃあ。お上にまかせりゃあ天人の最新武器とやらでパッパッパーとやってくれるんじゃね?」

銀時は沖田が持ってきたケーキをバクバク食べながら言った。その姿は糖尿病寸前の者とは思えない。

「旦那、パッパッパーとやるつもりなら捜査中止なんて言いやしやせんぜィ。明らかになかった事にしようとしてるんでさァ」
「ならそれで良いじゃねーか。何もなくなって江戸が平和になってめでたしめでたし」
「今日の夜から被害者の霊呼んで旦那に憑いてもらおうかねィ」
「え?お、沖田君?!そそそそんなことしたって、ぎ、銀さん考え変わんないヨォ?!」
「旦那、声が裏声になって震えていやすぜィ」

新八はソファに座って沖田と銀時が話をしている傍を「うーん」と唸りながら聞いていた。

そりゃあ、あんな化け物に会うのはもうごめんだ。しかしこのまま何で襲われたかも分からず終わるのもごめんだ。

銀時の隣では神楽が酢昆布をクチャクチャと食べながら頬杖をついている。

「銀ちゃん、そんなアホの依頼なんて蹴るアル。酢昆布何百個積まれようが受けてやるつもりないネ」
「ならその食ってる酢昆布を吐き出し手に持っている酢昆布を返せ」
「これは聞いてやる分アル。実行分は別料金ネ」
「旦那、料金は旦那が当分食っていける額は出しやすぜィ」

「無視かコラァ!しかも私の分が入ってないアル!」という神楽の声を聞き流して沖田は銀時を見据える。

「糖分食っていける額を出してくれるのは有り難いんだけどねぇ」
「漢字が違いやすけどそれでも良いや」

そう言うと沖田は頭の後ろで手を組み天井を見上げた。

「俺があの事件を解決してりゃあこんな事にはならなかったんでさァ。ぶっちゃけ今回の事件も近藤さんの事も俺の責任でィ。なのにまた何も解決できず終わるなんて俺の義に反しまさァ」
「…沖田君てさ、一匹狼だよね」
「ん?」

銀時の言葉に沖田は目を丸くして前を見る。亜麻色の髪を揺らし首を傾げた。

「確かに単独行動は多いですがねィ」

子供というのは自分が身近な人達にとってどんな存在なのか分からない生き物なんかね。

保護者達も大変だな、と銀時は思う。

「しゃーねぇな。手伝ってやるか」
「お!助かりやす」

銀時は耳をほじりながらフォークを置く。新八も「良かった」と安堵した。

だが神楽だけ嫌そうに顔を歪め抗議をする。

「銀ちゃん!考え直すアル!こいつそのうち万事屋を乗っ取るつもりネ!万事屋サドちゃんとか改名するつもりアル!」
「そんな変な名前付けるつもりはねぇし乗っ取るつもりもねぇよ」

沖田も腕を組んでそんな神楽をちらりと見、嫌な顔をした。

「新八はともかくお妙が襲われたんだぜ。あのゴリラ女といえども化け物相手に下手したら殺されてたかもしれねぇ」
「あれ?最初の言葉は何?」
「むぅ…わかったアル…」

大切な姉御の名前を出されたら致し方ない。神楽は渋々銀時に従う。

「…で、まず何すんの?」

ムスっとする神楽の桃色頭をポンと叩き銀時は沖田に聞いた。

「五十嵐家に行きやしょう。娘がいるかもしれやせん」
「おお、もうラスボスかよ」
「いや、娘は違うでしょう」

できる事なら助けてやりたい。

沖田はそう思い刀を手にした。





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